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2016 年度 実施状況報告書

台湾先住民の「民族」自治:中国と周辺地域における脱植民化

研究課題

研究課題/領域番号 26503018
研究機関広島大学

研究代表者

中村 平  広島大学, 文学研究科, 准教授 (80632116)

研究分担者 木村 自  大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 総合人間文化研究推進センター, 研究員 (10390717)
山本 達也  静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワード脱植民化 / 台湾先住民 / 中国少数民族 / 回(民族) / チベット(民族) / 民族自治 / 資本主義 / 国際情報交換
研究実績の概要

7月から8月にかけて、代表者は、台湾総統による先住民族への歴史の謝罪について、ならびに台湾大学での関連資料調査を行った。民進党蔡英文総統のもと、先住民族に対する過去の植民主義の反省は政府レベルでも議題に上がるようになっているが、日本政府のそれについては未だ十分な検討と議論がなされてはいない。そうしたなか、代表者は、台湾先住民に対する日本の植民政策「理蕃」について、抵抗を続けた高地先住民の歴史経験と主体性から捉え返す論考を台湾で出版した。そこでは、国家とネイションを超える「私たち」が織りなす脱植民化運動とは、植民国家‐資本による生と土地の囲い込みというメカニズムが、植民地支配における暴力の経験の記憶に埋め込まれていることを分有するなかで押し進められていくという暫定的見解を述べた。また代表者は、台湾の二二八事件に関わる論文の翻訳を行い、日本植民主義における天皇制家族国家観に関わりポリアモリーについての著作の書評を出版した。8月には台湾史に関わる国際シンポジウムで、ダム建設による先住民タイヤルの半強制的移住についての報告のコメントを行った。
11月に代表者は、広島大学公開講座として、「台湾先住民との出会い」と題し、日本の植民地統治を中心にその歴史と記憶について考える講義を市民に向けて行った。
1月に代表者と分担者は研究会を開き、ホミ・バーバの文化のロケイション論の検討を軸に、脱植民化に関わる歴史と文化の記述について議論を行った。また1月に代表者は、台湾大学人類学研究科の大学院生らと台湾先住民と植民主義についての研究会を開催した。1月の調査では、タイヤル民族議会とサイシヤット民族議会、サイシヤット県議員に話を伺う機会を持った。
分担者はそれぞれ、チベット難民の日常性やチベタン・ポップと近代性の関わり、中国と関わるムスリムについてなどの著作を出版した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

代表者、分担者ともに、台湾・中国と周辺地域における調査を進め、学会における研究発表、論文と書籍の出版を行っている。また各種の研究会を開催している。代表者は今年度から新職場に移行し、新しい環境と仕事に順応しながら、単著の執筆を行い、出版社との折衝を行っている。総じて本研究は、脱植民化の原理的考察と歴史具体的記述の双方を踏まえ、国際的な研究交流を行いつつ着実に遂行しているといえる。

今後の研究の推進方策

代表者は台湾先住民の自治運動と脱植民化の動き、ならびに中国との関係性について調査研究を行う。分担者はそれぞれ、チベット難民社会における共生と脱植民実践について、ならびに中国少数民族地域における地方自治と脱植民地化に関する研究を進める。

次年度使用額が生じた理由

2016年度に実施予定であった調査計画について、調査協力を受ける予定であったカウンターパートが日程的に協力が困難になるとともに、2017年度に予定している計画と抱き合わせで調査を行う方が効果的かつ効率的であるとの代替案があったため、2016年度予定調査を含めて2017年度に調査を実施することにした。

次年度使用額の使用計画

台湾先住民の民族自治と脱植民化についての調査、ならびに中国雲南省の少数民族地域における民族自治に関する調査を、計画通り実施する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち謝辞記載あり 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 図書 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 近代経験のアリーナとしての歌手の身体ーチベタン・ポップ制作に見る「屈折する近代」と嗜好品の動態性2017

    • 著者名/発表者名
      山本達也
    • 雑誌名

      嗜好品文化研究

      巻: 2 ページ: 40ー48

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「占領」という視点から台湾の戦後の問題と二二八事件を論じる2016

    • 著者名/発表者名
      蘇瑶崇(著)、蘇瑶崇・中村平(翻訳)
    • 雑誌名

      商学討究

      巻: 67(1) ページ: 29-49

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 「(書評)深海菊絵著『ポリアモリー:複数の愛を生きる』」2016

    • 著者名/発表者名
      中村平
    • 雑誌名

      『Contact Zone(コンタクト・ゾーン)』

      巻: 8 ページ: 143-154

  • [学会発表] 郭雲萍「被沈沒的民族――泰雅族Qara部落的遷移流転」へのコメント2016

    • 著者名/発表者名
      中村平(討論者)
    • 学会等名
      現代台湾研究学術討論会・シンポジウム「東アジアの近代化と台湾社会の変遷(東亞近代化與台灣社會變遷)」
    • 発表場所
      吹田市:関西大学
    • 年月日
      2016-08-27
    • 国際学会
  • [学会発表] Pitfalls in Appropriating Human Rights Discourses? : a Case Study of Tibetan refugees in India and Nepal2016

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Yamamoto
    • 学会等名
      International sociological association
    • 発表場所
      オーストリア:ウィーン大学
    • 年月日
      2016-07-13
    • 国際学会
  • [図書] 「台灣山地原住民土地與生活之圈地圈生運動:日本殖民國家-資本下的人群分類與『理蕃』」、官大偉(編)『民族、地理與發展:人地關係研究的跨學科交會(順益台灣原住民博物館二十週年紀念叢書)』2017

    • 著者名/発表者名
      中村平
    • 総ページ数
      457(内105-129頁)
    • 出版者
      台北:順益台灣原住民博物館
  • [図書] 「国家のだまし絵――中国人ムスリム移民が反転する国家像」山本信人監修、宮原曉編『東南アジア地域研究入門 2 社会』2017

    • 著者名/発表者名
      木村自
    • 総ページ数
      336頁(うち担当頁は23-44頁)
    • 出版者
      慶応義塾大学出版会
  • [図書] 『せめぎ合う親密と公共』秋津元輝・渡邊拓也編2017

    • 著者名/発表者名
      山本達也
    • 総ページ数
      326(担当箇所263ー287)
    • 出版者
      京都大学学術出版会
  • [図書] 「宗教――台湾化とグローバル化」赤松美和子・若松大祐編『台湾を知るための60章』2016

    • 著者名/発表者名
      木村自
    • 総ページ数
      375頁(うち担当頁は268-272頁)
    • 出版者
      明石書店
  • [図書] 「年中行事――台湾歳時記」赤松美和子・若松大祐編『台湾を知るための60章』2016

    • 著者名/発表者名
      木村自
    • 総ページ数
      375頁(うち担当頁は273-277頁)
    • 出版者
      明石書店
  • [備考] 到来する暴力の記憶の分有:脱植民化の民族誌記述を考える

    • URL

      http://www.geocities.jp/husv83/

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公開日: 2018-01-16  

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