研究課題/領域番号 |
26503019
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
李 春子 神戸女子大学, 文学部, 非常勤講師 (40535788)
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研究分担者 |
桑子 敏雄 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 教授 (30134422)
野間 直彦 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80305557)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水 / 循環 / 伝統の森 / 文化誌 / 資料化 / 持続保全 |
研究実績の概要 |
「伝統の森」は、「水」の恵みをもたらし、地域・集落の開拓、災害誌(地震・干ばつ・洪水等)、文化伝来など人間社会の「生」の様々な営みと深く関わる。多様な生き物を育む森としても重要な役割を果たしてきた、生きとし生ける「命の歴史」を繋ぐ空間として長い間培われた「生態的価値」の森でもある。 2014年度は、東アジアの「伝統の森」の文化を、研究分担者と各地の研究協力者が現地調査を行い、地域誌・古絵図・祭礼・植生などを網羅した「文化誌的図鑑」の準備作業を行った。調査内容は、次の項目である。 1、調査地約85ヶ所の写真撮影を行い、森の空間位置の記述を行った。2、森の植生・生育状況を樹木専門家・樹木医等と確認して、図鑑形式でまとめた。3、森の古図、資料収集は、収集可能な限り行い、由来・地域誌等の文献を中心に調べて、データを文化誌図鑑形式で、1カ所につき1枚程度にまとめた。 2014年の調査の結果、伝統の森の保全が良い所と都市化等の人為的要因と病虫害や鹿、鳥等の動物の増加により被害がある所が明らかになった。循環する水の原点にもなり、文化的生態的も貴重な伝統の森の持続保全は、社会全体において再認識の意義は大きい。これらのの成果と結果を社会に広く発信する為、論文発表とともに「神都高千穂と神代川のかわまちづくりシンポジウム」において、東アジアの水を巡る伝統の森の文化誌の資料化の意義等を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2014年度は、東アジアの水を巡る伝統の森の調査を、約85カ所で実施した。当初計画では55カ所であったが、調査を行ううち、人為的・自然的な要因によって危機的状況におかれている伝統の森が多く存在することが明らかになった。そのため、資料化をより多く実施して広く社会に還元する必要性が高いと考え、調査地を100カ所に増やしたものである。方法は、「山・河・里・海」を繋ぐ視点で水と関わる森を選定し、一次的調査を行った。地域誌・古絵図・祭礼・植生などを網羅した「文化誌的図鑑」の準備のため、これらの調査結果を1カ所につき1枚の図鑑形式にする方向で作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度の調査地について、祭礼を中心に再度調査を行い、「文化誌図鑑」形式の一覧表を完成する予定である。2015年度は、新たに設けた調査地15カ所余りの調査を行い、東アジア100ヶ所の調査表を完成する予定である。調査は、2014年度の調査項目に祭礼を加えて行い、文化誌図鑑に反映する。 古図・文献資料を収集して、図鑑形式の報告を完成させる。その成果を学会で発表を行う予定である。また、研究分担者及び研究協力者は、文化誌図鑑に基づいて、論文を作成する予定である。また、今後、文化誌図鑑と論文をそれぞれ書物として刊行する予定である。文化的にも生態的にも貴重な伝統の森を未来の世代に繋ぐ基盤を作る。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査地の都合、祭礼の時期が合わなかったため、調査と資料整理を2015年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
2014年度に行なえなかった調査の旅費と資料整理(写真整理、古絵図整理、文章の訂正等)のために使用する。
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