農山村地域においては、今後、無人化し消滅する集落が多数発生すると予想され、その跡地が管理されず荒廃が進むことにより、国土の保全などの農山村地域が有する公益的機能の維持や、地域の歴史や文化の継承が課題となっている。本研究は、九州脊梁山地(熊本県、大分県、宮崎県)に立地する集落を対象として、消滅集落及び消滅が危惧される集落における土地所有の実態と特徴を明らかにし、土地所有者以外の様々な主体による消滅集落における集落環境の維持管理の今後の可能性を明らかにすることを目的としている。なお、本研究では、集落内に生活の拠点を持つ住民がいない集落を「無住化集落」とし、前述の条件に加え、通う住民もいない集落を「消滅集落」であると改めて定義しなおし、研究を進めた。 平成29年度は、熊本県下の1960年以降に発生した24の消滅集落のうち、住民の離散により自然消滅した10集落を対象として現地調査を実施し、集落環境の維持管理の実態把握を行った。その結果から、当該集落を無住化集落から消滅集落に至る段階に当てはめ、集落の無住化から消滅までの過程を明らかにした。 消滅から無住化までの段階については、現地調査から判断される「通い」の有無と頻度、道路管理の有無と頻度で判断することができた。その結果、無住化初期、初中期、中期、中末期、末期の5 段階に分けることができ、無住化から消滅までには時間差が生じ、段階を追って消滅していくことを明らかにすることができた。消滅したと判断することができた集落は、集落に通ずる道路が荒廃し、集落に到達することができず、空中写真からも集落自体の形跡も残っていないと判断することができた。
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