研究課題/領域番号 |
26504011
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
瀬下 博之 専修大学, 商学部, 教授 (20265937)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 逆選択 / 民法改正 / 買主責任 / 売主責任 / 瑕疵担保責任 / 中古住宅 |
研究実績の概要 |
日本や欧米の法制度や取引慣習などについて、不動産取引にかかわる内容を中心に問題点や論点を含めて検討するとともに、関連資料やデータ等を収集・整理した。特に平成27年2月10日に公表された「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」の理解と整理を進めた。瑕疵担保責任制度の廃止とそれにともなう債務不履行責任の規定の導入、危険負担制度の改正、保証契約にかかわる改正について重点的な論点として位置づけ、多くの時間を割いた。また、同時に経済学の最近の理論的・実証的な議論の進展について的確に把握することにも努めた。 その上で、本年度2月には瑕疵担保責任の廃止について、売り手責任の法制度から買い手責任への制度変更と位置づけ、そのような買い手責任への変更への意義と効率性について、経済学的な観点から分析した論文を『土地総合研究』誌上に発表した。基本的な議論は以下の通りである。 買主責任の下では、買い手が他の市場サービスや取引を利用・アレンジして市場に参加できるという点である。たとえば、小さな欠陥に不満を感じる人は、自分が不満を感じないようにリフォームすることができる。また民間の保険会社などを通じて、住宅瑕疵担保保険のような契約を購入することで、売主責任の瑕疵担保責任の状態と同様の状態を達成することもできる。 逆に、これらの付随的な取引は、売主責任の法制度の場合には有効には用いられない可能性が高い。たとえば売り主が取引前に消費者の好みと無関係のリフォームをするよりも、買い主自身が購入後に自分の好みに合わせてリフォームする方がより望ましい。住宅瑕疵担保保険を市場で購入する場合にも、売り主の側が買い手の好みをあらかじめ勝手に判断して購入するよりも、購入者が自分の都合に合わせた保証内容を選択する方が、適切な保証内容と保険料を選択できるからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年2月に公表された民法改正の改正に関する要綱案が中間試案より大幅に後退したため、内容や全体の整合性などについて再理解する必要などが生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
危険負担など他の改正部分の不動産取引への影響へ分析を広げる。 契約法における責任やリスク負担の問題について、より普遍的な分モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の最後に、民法の改正に関する要綱案が公表されたが、内容が中間試案よりも大幅に交代する内容となった。そのため、その変更点について整理・理解するために、全体の予定が後ずれする結果となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
資料収集・学会出張・聞取調査などのための資料代・謝金・および謝金 パソコン及びソフト購入代
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