研究課題/領域番号 |
26504014
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
矢田 尚子 日本大学, 法学部, 准教授 (40383195)
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研究分担者 |
太田 秀也 麗澤大学, 経済学部, 准教授 (00725004) [辞退]
太矢 一彦 東洋大学, 法学部, 教授 (90368431)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者 / スウェーデン / 入居契約 / 住宅管理 / アメリカ / リバースモーゲージ / デンマーク |
研究実績の概要 |
本研究は、高齢者の住まいの実態と権利関係について、日本・デンマーク・スウェーデンで比較法的研究を行うものである。昨年度は、スウェーデン・デンマークにおける資料分析及びヒアリング調査を実施し、本年度もその作業を継続して行った。 そのなかで、まずスウェーデンでは、高齢者の住まいに関する契約としては、建物賃貸借契約、居住権設定契約、協同賃貸借契約があることが明らかになった。そして、スウェーデンでは日本の民法にあたる法律がなく、居住に関しては、土地法が一般法として、その権利関係を規律しており、建物賃貸借契約は、土地法によって規律されていること、また居住権、協同賃貸借についてはスウェーデン特有の権利内容となっており、その各権利内容を明らかにした。 また、高齢者の居住については、もともと社会福祉の観点から考察されることが多く、また昨年度の研究からも、スウェーデン・デンマークでは、政府あるいは地方自治体の公的関与が強力であることが確認されたことから、本年度は、昨年度の調査研究成果を基礎に、さらに公的関与の実態を知るためのヒアリング調査を実施した。 昨年度は、ストックホルム市のみを調査対象としたことから、本年度は、スウェーデンの地方都市(ブレーキング県カールスハムン市、ロネビー市、ナッキャ市等)を調査対象とし、事業者及び入居者へのヒアリングのほか、住宅庁、社会庁、ナッキャ市等の市役所で、高齢者住宅に関するレクチャーを受けた。それらの成果の一部は既に公表し、研究会等でもその中間報告を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の報告書でも述べたとおり、スウェーデン・デンマーク両国における高齢者福祉施策や住宅制度を紹介した研究は国内にも多数存在する。しかし、スウェーデン・デンマークの居住に関する法律関係について書かれた文献は皆無といってよく、先ずは居住に関する権利関係を明らかにした。そして、現在はスウェーデンで入手した情報の分析をさらに進め、高齢者の居住に関する法制度の特徴及びわが国において参考となる点をあぶりだしている。 ただし、スウェーデンの法制度については、研究を遂行できるたけの資料を入手することができたものの、デンマークについては、想像以上に、参考となる法律関連の資料が少ないことが明らかとなった。また、両国は、欧州連合加盟国であることから、高齢者の居住に関する英語文献を多数入手できると予想したが、実際に現地で資料収集をした結果、英語文献について十分な成果を上げることができず、スウェーデン語・デンマーク語の言語の壁に阻まれることとなった。そのため、研究分担者とも話し合い、研究期間内に確実に研究成果をあげるため、デンマークについては、既に収集した資料を分析整理するにとどめ、スウェーデンに関する研究を優先させることとした。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように、研究期間内に具体的な成果を上げるため研究対象に優先順位を付け、まずは、スウェーデンにおける高齢者の住まいの実態と権利関係を明らかにし、わが国の状況を比較することで、参考となるものを明確にしていきたいと思っている。もっとも、スウェーデンに関する研究を進めるなかで、アメリカにおける高齢者の住まいの実情も参考とすべき点が浮かび上がってきており、英語文献であれば比較的負担も少ないことから、必要な範囲でアメリカに関する検討も行っていきたいと思っている。 来年度は、今一度スウェーデンに渡航し、個別の契約書等をできるだけ多く入手して、具体的な契約内容について情報を得るとともに、国内の有識者へのヒアリングも実施するなどして、情報の精度を高めていく予定にしている。 来年度が研究の最終年度であることから、高齢者の住まいにおける契約のあり方の提示、契約規制についての提言を行えるよう、研究分担者との情報交換の機会を増やし、それぞれの役割分担を明確にしながら、資料等の分析スピードをあげ、各人の成果をこれまで以上に共有しながら進めていくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、デンマーク語の文献を読み込むのに、かなりの困難を伴うことが予想されていた。そのため、翻訳代等を多めに計上していた。しかし、デンマークについては、基本的な事柄のみの検討にとどめることにしたこと及び、スウェーデンについては、英語文献を入手することもできたため、予定していた翻訳代等についての経費を抑えることができた。そのため、次年度に繰り越す使用額が発生した。なお、現地調査から得られる成果が大きいことを考慮し、本年度ですべての調査を終えるのではなく、一部調査を次年度にも繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の使用計画としては、予定していた翻訳代等の経費は抑えられたものの、実態調査の結果、やはりわが国の法制度とかなり異なる点が多いことから、さらなる現地調査が必要性があると考えている。そこで、繰越金については、本年度の現地調査の通訳代や、調査資料の翻訳等にも充てることとする。
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