研究課題/領域番号 |
26505002
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
田中 幸枝 福井大学, 医学部, 助教 (10197486)
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研究分担者 |
藤井 豊 福井大学, 医学部, 教授 (80211522)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ρクリスタリン / アルド・ケト還元酵素 / アルデヒド還元酵素 / Py-Tag |
研究実績の概要 |
当該年度は,ρクリスタリンに注目した.これまでに当研究室において,カエル水晶体のアルド・ケト還元酵素を精製しアルデヒド還元酵素の存在を確認している.ヒト,ラット,マウス,ウサギ,イヌなど多くの動物種では水晶体のメジャーなアルド・ケト還元酵素としてアルドース還元酵素が発現しているが,カエル水晶体ではアルドース還元酵素は全く発現していなかった.我々は,カエル水晶体のρクリスタリンの起源がアルドース還元酵素である可能性を考えている.そこでカエルの他の臓器におけるアルド・ケト還元酵素の発現を調べることにした. 各臓器から抽出した蛋白質についてρクリスタリン抗体を用いたウェスタンブロッティングを行った結果,多くの臓器でρクリスタリン抗体に陽性なバンドが検出された.臓器によって,水晶体からの抽出蛋白質で検出されたバンドと同じ分子量サイズのものとそれより少し大きな分子量サイズのバンドが観られた. 次に各臓器から抽出したRNAを用いてRT-PCRで発現を確認した.既知のρクリスタリン遺伝子の配列をプライマーとして用いたところ,レンズ,角膜,網膜以外に,脳,脊髄,舌,食道,胃,精巣に同じサイズのPCRプロダクトが得られたので,それらのシーケンス解析を行った.脳,脊髄では水晶体と同じ配列のρクリスタリン遺伝子が確認できた.また,舌,食道,胃,精巣ではρクリスタリン遺伝子とかなりのホモロジーを持つ配列の遺伝子が見つかった. 更に並行して,当初より計画していたPyラベル化試薬を用いたプロテオーム解析法については,BSA(ウシ血清アルブミン)を標準蛋白質としてリシルエンドペプチターゼおよびトリプシンによる消化後のペプチドをPyラベル化しMS測定を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は,水晶体の構造タンパク質であるクリスタリンのプロテオーム解析を行い多様な進化の過程を解明することである.クリスタリンは生物進化の過程で既存のタンパク質が無作為に転用されてきたものであり,その元になるタンパク質は種によって異なる.起源となるタンパク質がまだ判っていない種が多くあるので,そのタンパク質の解析をすることの重要性を考え,当初計画していた研究に加えた研究の必要となった.
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今後の研究の推進方策 |
水晶体クリスタリンの起源となったタンパク質がまだ判っていないものの一つに,カエルρクリスタリンがある.カエル水晶体のρクリスタリンの起源がアルドース還元酵素である可能性を考えて,今回各臓器から得られたρクリスタリン遺伝子とかなりのホモロジーを持つ配列の遺伝子をクローニングし,インビトロで発現させてそのタンパク質について詳細に調べることを進めている.それによりカエルρクリスタリンの元となったタンパク質をかなり絞り込むことが出来るものと考えられる. また,プロテオーム解析に大変有用なタンパク質・ペプチドの安定同位体標識試薬であるPyTag試薬についての研究も並行して進め,本研究に役立てたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度の研究の進捗状況がやや遅れていることと,新たに解析が必要と思われる事項が出てきたために次年度使用額とした.具体的には,当該年度に行ったタンパク質発現解析やmRNA発現解析には前年度購入してあった試薬類の残りも使うことが出来たが,次年度引き続きそれらの解析を行うために当該年度分の繰り越し分を使用する計画である.
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子配列解析用の試薬,およびタンパク質発現解析用の試薬(PyTag試薬を含む)は,1キットが高額であるため,次年度使用分をこれらの購入に充てる計画である.
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