研究課題
結晶化が困難な故に、構造解析することができない天然変性タンパク質の気相および溶液における構造を解析・比較する目的で研究を行った。ヒストンタンパク質のテール部分は、非常に塩基性が高く、一定の構造を有しないことがわかっており、ヒストンタンパク質と二重鎖DNAからなるヌクレオソームコアの結晶構造ではテール部分の構造は見えていない。しかしながらテール部分は機能的に重要な役割を果たしていることが知られている。これまでに、申請者は、テール欠損ヌクレオソームコアの調製や質量分析による特性解析に成功している。そこで申請者は、これらテールペプチドの気相での振る舞いを解析する目的で、nanoESIイオン源を装着したイオンモビリティ質量分析装置 Synapt G2 HDMS を用いてマススペクトルの測定を行うとともに、イオンモビリティセルを通過する arrival time から各イオンの衝突断面積を求めた。一方、溶液構造については、web 利用可能なプログラムPEP-FOLD を用いてエネルギーレベルの低い構造モデルを5つ求め、web 公開されている衝突断面積の計算プログラム mobcal を用いてその衝突断面積を算出後、平均値を求めた。更に詳しく解析する目的で、塩基性アミノ酸に富んだ合成ペプチドについても同様の実験を行い、塩基性の高いペプチドの特性解析を行った。その結果、mobcal では He 中での衝突断面積を算出するためか、もしくは溶液構造がと気相構造のギャップのためか、構造モデルの理論的な衝突断面積よりも実測値の方が大きい値が得られたことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は、一連の天然変性タンパク質およびペプチドの構造解析を行い、今年度は塩基性の高い天然変性ペプチドに特化した研究を行い、着実に研究の進展がなされているので。
現在の問題点を解決するための検討を行った後、研究成果を論文化するとともに、X線結晶構造解析では見えてこないヒストンタンパク質のテール部分の修飾に伴うヌクレオソームの構造への影響についても解析する。また、荷電状態と質量分析装置内での振る舞いについても解析する。
機器の補修費に予算外の支出があったが、物品費の購入を計画より低額に抑えられたため。
質量分析関連のメンテナンスおよび消耗品費として使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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