研究課題
近年、様々なヌクレオソームコアの結晶構造解析結果が報告されているが、フレキシブルなテール領域は結晶構造ではほとんど観測されない。そのため X線結晶構造解析でフレキシブルなテール領域を含めた構造解析を行うことは困難である。そこで、結晶構造解析では得られない情報をネイティブな状態で質量分析することにより獲得すること、および気相におけるフレキシブルな領域の振る舞いを質量分析で解析することを目的として、テール領域をアセチル化したヒストンタンパク質からなる nucleosome core particle (NCP) およびフレキシブルなリンカーDNA領域を有するdi-nucleosome core particle (di-NCP) を調製し、実験を行った。試料調製において、それまで使用していたヒストンアセチル化酵素p300(市販品)のロット差が大きいことが判明し、ヒストンテールペプチドに対するアセチル化の効率が大きく低下してしまう問題が生じた。そこで、自研究室において別のヒストンアセチル化酵素を調製することに着手した。一方、2つの601配列を20塩基のリンカーDNAでつなぎ、さらに両端に20塩基のリンカー領域を有する356塩基対のDNAオリゴマーを調製した後、これを用いてdi-NCPを作製した。電気泳動で精製後、ネイティブな状態で質量分析することにより、目的通りのdi-NCPが得られたことを確認した。また、ヒストンテールペプチドおよび高塩基性ペプチドの気相および溶液における構造を比較し解析した結果をまとめ、論文化した。
3: やや遅れている
年度途中で冷却遠心機が故障し、代替機となる中古の装置を購入するまで時間を要したため。また使用していた市販品ヒストンアセチル化酵素p300のロット差が大きいことが判明したため。
自研究室で調製したヒストンアセチル化酵素を用いてヒストンタンパク質をアセチル化し、その後、NCPおよびdi-NCPを調製する。得られたアセチル化NCPおよびアセチル化di-NCPについて質量分析を用いて気相での振る舞いについて解析する。
高速冷却遠心機が故障し、使用不能になり中古品の購入を年度末に行わざるを得ず、そのため研究に遅れが生じたため。
物品費(消耗品)および分析機器補修費として使用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Chem. Sci.
巻: 7 ページ: 5398-5406
10.1039/C6SC00153J
Anal. Bioanal. Chem.
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