研究課題/領域番号 |
26505012
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
岡田 安代 武庫川女子大学, バイオサイエンス研究所, 助教 (70211117)
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研究分担者 |
市川 厚 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (10025695)
入江 徹美 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (60150546)
竹山 志朱代(堀山志朱代) 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (80411982)
西川 淳一 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (90218131)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニーマンピック病C型 / マルトシル-βシクロデキストリン / コレステロール |
研究実績の概要 |
Lysosome病の一種であるNiemann-Pick病C型(NPC)は、肝脾腫,骨髄での泡沫細胞の出現,組織へのコレステロール、スフィンゴミエリンの蓄積を特徴とし、中枢神経症状を呈する常染色体劣性の脂質代謝異常症である。主要原因遺伝子はNPC1およびNPC2であり、NPC1およびNPC2は分子内にsterol-sensing domainを有し、主にlate-endosome/lysosomeに存在し、細胞内のコレステロール輸送に関与していることが示唆されている。本疾患に対する有効な治療法は未だ確立されていない。本研究の目的は、マルトシル-βシクロデキストリン(6-O-α-maltosyl-β cyclodextrin; Mal-βCD)が、NPC細胞のリソソームにおける異常なコレステロールの蓄積を改善し、NPCの治療薬として適用できることを立証することである。 【方法】NPC病態細胞として、Chinese hamster ovary 細胞をretrovirus-mediated gene trap mutagenesisでNPC1遺伝子を破壊した細胞(NPC1 KO, A101)を用いた。Lysosome内のコレステロールの局在性をLysosensorおよびFilipin染色により蛍光顕微鏡で観察した。また、細胞内遊離型コレステロール(FCho)およびエステル型コレステロール(ECho)量をLC/MSにより定量した。 【結果】NPC1 KO細胞は正常細胞に比べて、FChoがLysosome内に異常に蓄積していた。Mal-βCD処理(3 mM ~10 mM)により、NPC1 KO細胞および正常細胞の細胞内FChoは濃度依存的に減少した。また、Mal-βCD処理により、NPC1 KO細胞のFCho/EChoのバランスは改善された。以上の結果より、Mal-βCDはNPC治療薬としての応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に、Human由来のニーマンピックC型病患者由来の細胞を使用して、「Npc1欠損細胞における細胞コレステロールレベル変化によるコレステロール放出因子の影響」を調べる予定であったが、本細胞の入手に長期間要したため、本実験に着手できなかった以外は、ほぼ計画どおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果を基盤に、以下の実験を計画している。 1、センダイウイルスベクターを用いてNPC由来皮膚線維芽細胞からiPS細胞の樹立が可能である。iPS細胞を肝様細胞へ分化させ、NPC病態モデルとして使用できることは実証されている。iPS細胞の分与を受け、以下の実験を実施する。 (1)Mal-βCD処理によるフリーコレステロール(FCho)とエステル型コレステロール(ECho)の影響 (2)Mal-βCDの細胞内取り込みと取り込み機構(3)Mal-βCDによる細胞コレステロールレベル変化によるコレステロール放出因子の影響 2、 NPC病の原因遺伝子であるNpc1のヘテロ欠損(Npc1+/-)およびホモ欠損(Npc1-/-)マウスにMal-βCDを投与し、生存率、血清生化学パラメータ、主要臓器の病理学的評価などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定していた、「Npc1欠損細胞における細胞コレステロールレベル変化によるコレステロール放出因子の影響」に関する実験に着手できなかった。本実験は、Human由来のニーマンピックC型病患者由来の細胞を使用する予定であったが、本細胞の入手に長期間要したため、本実験で使用する細胞培養試薬、遺伝子実験試薬などの経費を次年度請求する。
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次年度使用額の使用計画 |
Human由来のニーマンピックC型病患者由来の細胞をH27.4月に入手できたので、「Npc1欠損細胞における細胞コレステロールレベル変化によるコレステロール放出因子の影響」に関する実験を実施する予定である。 NPC病は細胞内でのコレステロールを中心とした脂質輸送を司るNPC1あるいはNPC2の異常が原因である。Npc1 KO細胞のコレステロールレベルをMal-βCDで低下、Cho/Mal-βCDで上昇させ、時間軸で細胞を回収し、細胞膜/リソソーム画分を調整する。それぞれのコレステロールレベルをLC/MSで定量する。NPC2および代表的なコレステロール放出因子(ABCA1)、SR-B1、カベオリンファミリー、ABCA1やSR-B1の転写因子(LXRとPPARγ)、SREBPsのmRNA及びタンパク質の発現変化を時間軸で定量する。コレステロール放出因子から、NPCの病態を解析する。
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