本研究では、環状部分構造とESI-MS2スペクトルの関係性を明らかにし、環構造判定能力が高いピークを用いた環状構造部分構造推定法と推定ツールを開発する。 平成26年度は、構造式に含まれるすべての環構造を抽出するツールを作成し、公開スペクトルデータベースMassBankを用いて、スペクトル内のピークの環構造判定能力を算出し、部分構造の類似度とスペクトルの類似度の間に強い相関関係があることを確認した。 平成27年度は、未同定スペクトルを入力とし、含まれるピークの環構造判定能力を合算することで環構造予測スコアを計算する手法を考案した。さらに、MassBankのスペクトルを用いて、この環構造予測スコアの予測能力(精度、再現率、F値)を計算し、いくつかの環構造について有効性を検証した。これらの結果をもとに、未同定スペクトルを入力とし、特定の環構造について環構造予測スコアを計算し、その構造を持つと予測することの精度と再現率を出力する環構造予測ツールの設計に着手した。また、MassBankにスペクトルが登録されている化合物が持つすべての環構造について、環構造予測スコアの予測能力を計算し、計算結果をデータベース化することにも着手した。このデータベースは、設計に着手した環構造予測ツールを有効活用するために必要なデータを提供する。 平成28年度は、未同定スペクトルを入力とし、特定の環構造について環構造予測スコアを計算し、その構造を持つと予測することの精度と再現率を出力する環構造予測ツールを作成し、環構造予測能力を検証した。
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