生体内における種々の金属元素の挙動と、金属が関与する生体分子の状態を同時に体外から可視化分析する新規生体メタロミクス計測技術の確立を目指し、平成28年度までの研究で、生体内に投与した複数の放射性同位体の挙動を、半導体コンプトンカメラGREIを用いて定量性が改善された3次元の断層画像として取得することを可能にした。本画像化手法を用いると、単一のGREI撮像ヘッドで一方向から撮像したデータから3次元断層画像を生成することが可能となり、過去の撮像データにも適用することができる。糖尿病モデルマウスに同時に投与したSr-85、Mn-54、Zn-65の撮像データに適用した結果、Sr-85の特徴的な挙動が3次元画像として明瞭に描出され、さらに、Mn-54も同様の挙動を示していたことが可視化された。また、再現性検証実験の撮像データに本手法を適用した結果、従来の画像では識別が難しかった組織でのSr-85の特徴的な挙動が3次元で明瞭に確認され、同病態との相関を示唆する有望な画像データが得られた。そこで、平成29年度は、本技術の有用性をより明確に示して実用化を促進するための、生体内の挙動を可視化分析する金属元素について検討した。NaおよびKは、それぞれ細胞外液、細胞内液中にイオンとして高い濃度で存在し、それぞれのイオンのバランスが生命機能の維持に重要であることが知られている。このことから、NaおよびKの放射性同位体を同時に投与し、それらイオンが関連する分子レベルの変化を画像診断可能にする着想に至った。入手が容易なNa-22を正常マウスに投与してGREI撮像実験を行い、Naイオンの体内での挙動を3次元で画像化することに成功した。今後、本研究テーマに関して引き続き研究を行い、病態モデル動物における挙動の変化を捉えることで、本手法の有用性を示したい。
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