研究実績の概要 |
金属結合タンパク質の構造解析手法開発の基礎研究として、金属-ペプチド複合体のフラグメンテーションについて研究を行った。まず、金属-ペプチド複合体の構造解析には従来質量分析で用いられる衝突誘起解離法(Collision Induced Dissociation, CID)よりも電子移動解離(Electron Transfer Dissociation, ETD)が有効であることを明らかにした。加えて、ペプチドのETDタンデム質量分析による構造解析においては、通常エレクトロスプレーイオン化質量分析で生成する多価プロトン化分子よりも価数の大きい金属-ペプチド複合体をプリカーサーイオンとして用いることで、より良好な結果を得ることができるようになった。さらにETDにおけるフラグメントイオンの生成プロセスから、金属-ペプチド複合体における金属の結合位置の推測が可能であることを明らかにした。これらの成果は査読付き学術雑誌に2件の原著論文として発表している。(Asakawa, D., Takeuchi, T., Yamashita, A., Wada, Y., J. Am. Soc. Mass Spectrom. 25, 1029-1039, 2014およびAsakawa, D., Wada, Y., J. Phys. Chem. B 118, 12318-12325, 2014) さらに、金属-ペプチド複合体のETDタンデム質量分析において、フラグメンテーションの本質解明に繋がる重要な実験結果を得たため、計算化学などを用いてより詳細に解析を行っている。
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