金属結合タンパク質の構造解析手法開発の基礎研究として、金属-ペプチド複合体のタンデム質量分析におけるフラグメンテーション過程について研究を行っている。 昨年度までにペプチドの電子移動解離タンデム質量分析法において金属塩添加により生成する金属-ペプチド複合体をプレッカーサーイオンとして用いることでアミノ酸配列を反映する良好なスペクトルが得られることを明らかにした。さらにこのメカニズムについて検討するために計算化学を用いて、遊離プロトンを含まない金属-ペプチド複合体を設計し実験を行い、メカニズムを明らかにした。 本年度は前年度までに明らかにしたメカニズムを応用し、リン酸基と特異的に結合する金属錯体を用いリン酸化ペプチドの配列解析法の開発を行った。当該金属錯体を添加することでリン酸化ペプチドを選択的にイオン化し、電子移動解離タンデム質量分析法によりアミノ酸配列解析を行うことが可能となった。さらに亜鉛の単一同位体から構成される錯体を用いることで、電子移動解離で生成したフラグメントイオン内に含まれるリン酸基の数の推定が容易となった。本分析手法は、生体中に存在するリン酸化ペプチドの分析への応用が期待される。この成果を著した論文はAnal Chem誌に掲載された。
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