研究課題/領域番号 |
26506001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
泉 正範 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80714956)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙放射線 / 植物 / オートファジー / 葉緑体 |
研究実績の概要 |
本研究では、宇宙放射線による葉緑体障害の特徴づけを行うこと、その障害を除去し葉緑体機能を維持する「葉緑体クリアランス機構」を解明すること、を目的としている。後者については、特に細胞内自己分解システム「オートファジー」による葉緑体クリアランスの機能と分子メカニズムを明らかにすることを主目的としている。平成26年度は、以下の2項目について得に研究が進展した。 【1】宇宙放射線による葉緑体障害の特徴づけ:宇宙放射線による障害環境を想定し、モデル研究植物シロイヌナズナに対し様々な強度の紫外線B(UVB)を照射し、葉緑体障害の度合と変動を解析した。葉緑体機能はUVBの強度および照射時間依存的に低下し、その後1週間通常条件で栽培してもわずかな回復しか見られなかった。一方紫外線を含まない可視光による障害は、照射直後の障害度合がUVB照射より大きくても、照射後1日でほぼ回復した。よって、UVBにより誘導される葉緑体障害は、可視光由来の障害とは明らかに特徴が異なり、これまで知られている可視光障害の修復系とは異なる系で修復されることが示された。 【2】各種放射線照射時におけるオートファジーの機能解析:UVB照射時に誘導される葉緑体オートファジーでは、葉緑体が丸ごと運ばれて分解されるオートファジー(クロロファジー)が主に機能することを明らかにした。オートファジー欠損変異体では異常な構造を持つ葉緑体が細胞質に蓄積していたことから、UVB障害により壊れた葉緑体がオートファジーによって選択的に除去されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙放射線のうち紫外線B(UVB)に由来する障害については、葉緑体障害の特徴づけを一通り終えられたと共に、その障害で誘導される新しいオートファジー経路の発見に至っており、重要な成果を得ることが出来たと言える。また他の宇宙放射線条件についても照射系の検討を進めており、「UVB照射時に葉緑体オートファジーが起きない変異体」の選抜系についても、効率的な選抜のための実験系構築が進展している。よって本研究計画はおおむね順調に進展している、と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
紫外線Bによる障害で誘導される葉緑体オートファジーは、これまでにない新しい経路であることが明らかになったため、その分子メカニズムの解明を進める上では、当初は計画に無かったアプローチを導入するなどの工夫が必要となることが想定される。計画していた正遺伝学解析だけにとらわれず、液胞やオートファジー可視化系統を用いたイメージング解析や、葉緑体機能に関連する変異体を用いた逆遺伝学解析などの適用を検討していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりは特に物品費に余剰が生じた。理由としては、当初想定していた変異体の大規模栽培による選抜を、より省スペースで短期間に変異体を選抜できる系を構築する方針に切り替えたため、植物栽培等にかかる物品費等が削減され、結果として全体にかかる経費が削減できたものと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用分等は、得られた変異体の遺伝子同定のために次世代シーケンサーを使用するための費用など、次年度の解析をより効率的に進めるための物品費等で有効的に使用する計画である。
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