今年度は、ハイスループットでシロイヌナズナ胚軸の回旋転頭運動を解析できる実験系の開発を重点的に実施した。まず、最もシンプルな実験系として従来実験に用いてきた発芽条件を試したが、ほとんど胚軸が培地から離れず、回旋転頭運動の観察には植えかえが必要であることが分かった。これは、ハイスループットの実験系としては不適である。そこで、培養器材、培地、発芽の条件をそれぞれ検討した。育成チャンバーを自作し、様々な条件とあわせを組み合わせて実験することで、培養器材、培地、および発芽の条件を決定することができた。これにより、従来はカメラ一台あたり十個体程度/日の処理能力であった実験系を約100個体/日まで上げることができるようになった。これにより、回旋転頭運動突然変異体のスクリーニングが可能になると考えている。これに基づき、茎頂の運動を自動的に数理解析するソフト開発について、関連研究者と打ち合わせを開始した。一方、画像取得のためのフラッシュ光が回旋運動に影響を与えていることも示唆されており、赤外線投光器を用いたビデオカメラによる画像取得の検討など、検討すべき課題は残っている。また、次年度実施の突然変異体スクリーニングに向け、変異源処理したシロイヌナズナM2種子を取得した。 さらに、共同研究者として参画している宇宙実験「植物における回旋転頭運動の重力応答依存性の検証(Plant Rotation)」の運用が開始された。次年度開発するソフトウェアは宇宙実験で使用しているイネやアサガオの解析においても適用できるようにする予定である。
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