研究課題/領域番号 |
26506004
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
平田 美智子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40544060)
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研究分担者 |
宮浦 千里 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20138382)
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物・生体工学 / 宇宙空間 / 骨粗鬆症 / 機能性食品 |
研究実績の概要 |
国際宇宙ステーションの本格運用により宇宙での有人活動が活発化し、微小重力による骨量低下や筋委縮が問題となっている。微小重力による骨量低下を予防・改善する方策は宇宙飛行士の健康管理のみならず、高齢化により顕在化している骨粗鬆症の予防法に活用できる点でも意義深い。そこで、安全で食品として日常摂取が可能な天然キサントフィルに着目し、これまでに、天然キサントフィル類が骨吸収を抑制し、骨形成を促進して骨量増加効果を示すことを見出した。本研究課題では、キサントフィル類を用い、微小重力による骨量低下を阻止できるキサントフィルを決定し、骨粗鬆症への予防効果とそのメカニズム解明も進め、宇宙飛行士サプリメントの開発を目指している。 平成26年度は、ルテイン、ベータクリプトキサンチン、リコペンの3種のキサントフィルについて、骨吸収抑制作用および骨形成促進作用の解析を実施した。さらに、キサントフィルの骨への作用メカニズムの解析も実施した。その結果、ルテイン、ベータクリプトキサンチン、リコペンの3種全てにおいて、破骨細胞分化抑制作用ならびに骨吸収抑制作用が認められ、その強度はほぼ同程度であった。しかし、ルテインのみが骨形成促進作用を有していることが明らかとなった。従って、3種のキサントフィルの骨吸収抑制と骨形成促進の強度比較の結果、両方の作用を有し、かつ、最も作用が強力な1種の最適キサントフィルは、ルテインであると決定した。さらに、ルテインの骨への作用メカニズムの解析において、破骨細胞誘導因子の遺伝子発現を抑制し、骨形成関連因子の遺伝子発現を促進することが認められ、ルテインが骨量低下を予防・改善する有効な因子であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、当初計画であった、ルテイン、ベータクリプトキサンチン、リコペンの3種のキサントフィルについて、骨吸収抑制作用および骨形成促進作用の解析を完了した。さらに、次年度実施予定であった、キサントフィルの骨への作用メカニズムの解析の予備検討も実施した。その結果、3種全てにおいて、破骨細胞分化抑制作用ならびに骨吸収抑制作用が認められ、また、ルテインのみにおいて骨形成促進作用が認められた。さらに、その作用メカニズムを解析したところ、破骨細胞誘導因子の遺伝子発現を抑制、骨形成関連因子の遺伝子発現を促進することが示唆された。これらの成果は平成27年度の本課題を円滑に進め、より前倒しの課題実施を可能とする。これら理由により、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果により、ルテインは、骨量低下を予防・改善する有効な因子であることが示唆されたため、平成27年度は、主としてルテインの骨粗鬆症への有効性を検討する。具体的には、骨粗鬆症モデルマウスを用いて、候補化合物を投与し、骨作用を示すか否かを明らかとする。骨粗鬆症モデル動物は雌性マウスに卵巣摘出を施して作製する。比較対照として偽手術マウスを用いる。卵巣摘出マウスの一部に、キサントフィル(ルテイン)を経口投与する。術後4週において、大腿骨の骨密度(BMD ; bone mineral density)はDEXAを用いて定量化し、マイクロCT解析により大腿骨遠位部における海綿骨の3次元解析を行なう。組織レベル解析は大腿骨の切片を作製し、骨形態計測を行なう。以上、研究計画あるいは研究を遂行する上での障壁はなく、順調な課題実施が可能である。
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