メダカにおいて、骨をつくる細胞である骨芽細胞の分化については、未だによく理解されていない現状であり、骨芽細胞分化の分子メカニズムを明らかにすることは、宇宙研究を推進するためにも急務である。本研究は、骨形成に関わる遺伝子のノックアウトメダカをゲノム編集技術を用いて作製し、各遺伝子の機能を明らかにすることを目的としている。 本研究ではTALEN法を用いて、マウスにおいて骨芽細胞の分化に必須とされている転写因子、ostrixとrunx2、細胞外基質タンパクであるX型コラーゲン(col10a1)、骨芽細胞の前駆細胞で発現する転写因子、pax1、pax9およびbapx1の6種類の遺伝子のノックアウトメダカの作製・系統化に成功した。これらのメダカ変異体の表現型を精査したところ、骨形成に異常があることが分かった。特にostrix変異体では、頭部、胴尾部や鰭などの全身の骨組織で骨形成不全が見られ、osterix遺伝子が骨形成に必須の遺伝子であることが明らかとなった。osterix変異体における骨芽細胞の発生を、トランスジェニックメダカを用いて詳細に調べた結果、osteirx変異体の椎体においては、col10a1陽性細胞が正常に発生してくることが分かった。またこれらのcol10a1陽性細胞はアルカリファスファターゼ活性を有し、椎体の石灰化に関与していることが示唆された。さらに、col10a1遺伝子のプロモーター下でosterix全長cDNAを発現するトランスジェニックレスキューメダカ系統を作製したところ、osterix遺伝子のプロモーターを用いたレスキュー実験と同様に、表現型の回復が変異体で認められた。以上のことは、col10a1陽性細胞は未熟な骨芽細胞と考えられ、骨芽細胞の成熟にはosterix遺伝子の発現が必須であることを強く示唆しており、魚類における骨芽細胞分化の一端が明らかとなった。
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