研究実績の概要 |
STS-129(90日間滞在, n=3),STS-131(15日間滞在, n=16)のマウス、およびそれぞれに対する地上コントロールマウスから摘出された前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)および蝸牛サンプルよりRNAを抽出後、クオリティチェックを行い、マイクロアレイ(Agilent社 Gene sprint 3G, 62976遺伝子)による網羅的発現解析を行った。 まず全体的な発現プロファイリングを90日間滞在群と15日間滞在群で比較してみたところ、前庭および蝸牛とも15日間滞在群に対して90日間滞在群では発現のバラツキが小さく、長期に微小重力環境下に滞在することによって新しい重力環境に適応してきている様子がうかがえた。 続いて地上コントロール群と90日間滞在群の前庭における遺伝子発現を比較検討したところ、GABA関連遺伝子、骨代謝関連遺伝子、DNAダメージ修復遺伝子などの424遺伝子について2倍以上の発現増加を認める一方で、カルシウム結合蛋白などの306遺伝子について1/2以下の発現減少を認めた。また興味深いことに、これら遺伝子群について15日間滞在群の発現を検討したところ、90日間滞在群で発現増加していたものは発現が減少し、90日間滞在群で発現減少していたものは発現が増加している事が明らかとなった。また、熱ストレス応答蛋白遺伝子の発現は15日間滞在群で地上群の約3倍にまで達していたが、90日間滞在群ではその半分程度まで発現が減少していた。ここからも、長期滞在による微小重力環境への適応の様子がうかがえる。
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