研究実績の概要 |
STS-129(90日間滞在, n=3),STS-131(15日間滞在, n=16)の微小重力環境滞在マウス、およびそれぞれに対する地上コントロールマウスの前庭および蝸牛サンプルによる網羅的発現解析の比較実験として、同日間2G環境に滞在させたSTS-129と同系統のマウスの発現解析を行った。 以前から異なる重力環境下における遺伝子発現変化に関する共同実験を行っている大阪大学(大平、河野)にて、人工過重力(2G)環境下(90日間滞在, n=8)のマウス、および1Gコントロールマウスから摘出された前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)および蝸牛サンプルを用い、RNAを抽出後、マイクロアレイ(Agilent社, 62976遺伝子)による網羅的発現解析およびreal-time PCRによる定量的発現比較解析を行い、重力変化に共通して応答する遺伝子の同定を試みた。 STS-129(90日間宇宙滞在群)で大幅に発現減少していたS100a8, S100a9, Oc90, Hspb7の遺伝子は、おもしろいことに2G環境下に90日間暴露しても同様の遺伝子発現変化を示していた。カルシウム結合タンパクであるS100a8,9や耳石タンパクであるOc90は、微小重力でも過重力でも長期に渡る異重力環境滞在によって発現抑制を受けることが明らかとなり、重力変化が耳石代謝に及ぼす変化を表していると思われた。 一方、90日間宇宙滞在群で増加していたGabra2は、長期の微小重力環境滞在によって慢性化した前庭系へのシグナル入力減少を補うため発現を増加させることで神経活動を増強している可能性があると思われたが、2G環境下では発現抑制を受けていた。これは慢性的に増加した前庭系へのシグナル入力を減少させるために発現を抑制させ、神経活動を調整している可能性があると思われた。
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