研究課題
これまでに、バイオミメティクスの観点から昆虫の体表面物質(および疑似物質)を生物試料に塗布し、電子線およびプラズマ照射により体表全面に高気密NanoSuitを形成する新技術によって、生物試料を電子顕微鏡の高真空下で生きたまま維持・観察することに成功している(Takaku et al. 2013, Takaku et al. 2015, 特願2012-197927等)。さらに、生体適合性を考慮し、糖類とグリセリンを配合して新規合成溶液surface shield enhancer(SSE:国際出願番号PCT/ JP2015/052404)を開発した。SSEによって保護された個体は高い真空耐性を示し、この特性は多細胞生物に限らず、幾種かの単細胞生物においても確認され、これまで困難であった切除したばかりの哺乳類の組織・単離した真核細胞や培養細胞などを含水状態のままチャージによる障害もなく良好な分解能で電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)観察が可能となり、FE-SEM観察後も線維芽細胞にダメージがなく増殖することを確認した。そしてSSEのNanoSuit膜厚は超薄切片法によってわずか10nmであることを確認した(Takaku et al. 2017)。NanoSuitの特性として、宇宙ステーション軌道レベルに相当する超高真空下(10-5-10-7Pa)でも生物内のガスや液体の放出を抑制する働きをしていると考えられ、しかも帯電を大幅に軽減し、整然とした表面構造を巧妙に維持できることが明らかとなり、NanoSuitがFE-SEM内における生命維持に重要な役割を担っていることが示された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Royal Society Open Science
巻: 4 ページ: 160887
10.1098/rsos.160887