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2015 年度 実施状況報告書

培養動物細胞における重力感知・応答機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 26506009
研究機関名古屋大学

研究代表者

小林 剛  名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40402565)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード宇宙生命科学 / 微小重力 / 動物細胞 / 細胞力覚
研究実績の概要

最近の宇宙実験により、個々の培養動物細胞が微小重力環境を感知し応答することが分かってきた。しかし、そのメカニズムの詳細は未だ不明である。本研究では、この課題に挑戦し「重力変化は比重の重い細胞内器官を介して細胞内骨格の張力に影響を与え、細胞の初期応答を引き起こす」という仮説を検証し、動物細胞が微小重力環境を感知する仕組みを分子レベルで明らかにすることを目的としている。特に、機械刺激受容チャネルなどのメカノシグナルに注目して、感知応答反応におけるそれらの役割と上流経路を解析する。また、国際宇宙ステーション「きぼう」における宇宙実験プロジェクトを利用し、細胞の重力感知/応答機構に関わる分子基盤の解明を目指す。今年度は、細胞のメカノトランスダクションを担う転写調節因子YAPに注目し、模擬微小重力環境、あるいは、微小重力環境下においた培養細胞におけるYAP活性の変化を解析した。その結果、模擬微小重力環境下で24時間培養した間葉系幹細胞では、YAP活性が低下していることを細胞組織染色により見出した。すなわち、対照群と較べてYAP分子が核内に局在している細胞の割合が減少していた。YAP活性の低下はレポーターアッセイ法によっても確認された。Western blotting法により、YAP量を解析したところ対照群の細胞と較べ模擬微小重力環境においた細胞にほとんど変化は見られなかった。従って、YAP活性は細胞内局在の変化に依存すると考えられた。さらに、国際宇宙ステーション内で培養した間葉系幹細胞においても、YAP分子が核内に局在している細胞の割合が対照群より低下していた。従って、YAP分子の活性低下が細胞の微小重力環境感知におけるシグナル伝達経路である可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

地上実験に加え、国際宇宙ステーションの「きぼう」での宇宙実験を利用し、細胞の微小重力環境感知における重要なシグナル伝達経路を明らかにしつつある。微小重力環境下においた培養動物細胞の動態のライブ観察を目指した試みは、9月のロケットの打ち上げ失敗により一度は潰えたが、再度、サンプルを打ち上げることになり再挑戦中である。

今後の研究の推進方策

これまでに見出した微小重力環境下における間葉系幹細胞のYAP/TAZ分子の活性低下を手掛かりにその上流を解析し、当初、構築した感知機構のモデルの検証を行う。また、YAP/TAZ分子の活性低下を抑制あるいは亢進した場合、模擬微小重力環境における間葉系幹細胞の骨分化がどうなるか解析し、YAP/TAZ分子の活性低下が間葉系幹細胞の微小重力環境に対する応答反応に対しどのような意義を持つのか解析する。加えて、3回目の宇宙実験に再度、取組み、微小重力環境下での間葉系幹細胞のミトコンドリア、細胞骨格や接着斑を可視化し細胞内での動態のライブ・イメージングを行う。

次年度使用額が生じた理由

2015年6月のロケット打ち上げ失敗によって宇宙実験が中止となったが、次年度にかけ再度取り組んでいる。しかし、そのため研究計画の実行に若干の遅れが生じた。その結果、そのための試薬購入時期がずれ、その消耗品購入分を次年度に繰り越した。

次年度使用額の使用計画

上記の試薬を購入する予定。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Identification of Meflin as a Potential Marker for Mesenchymal Stromal Cells2016

    • 著者名/発表者名
      Maeda K, Enomoto A, Hara A, Asai N, Kobayashi T, Horinouchi A, Maruyama S, Ishikawa Y, Nishiyama T, Kiyoi H, Kato T, Ando K, Weng L, Mii S, Asai M, Mizutani Y, Watanabe O, Hirooka Y, Goto H, Takahashi M
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 6 ページ: -

    • DOI

      10.1038/srep22288

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 骨と筋におけるメカノセンシングとメカノシグナリング2015

    • 著者名/発表者名
      小林 剛、曽我部正博
    • 雑誌名

      THE BONE

      巻: 29 ページ: 255-263

  • [雑誌論文] Ion channels activated by mechanical forces in bacterial and eukaryotic cells2015

    • 著者名/発表者名
      Sokabe M, Sawada M, Kobayashi T
    • 雑誌名

      Subcell Biochem

      巻: 72 ページ: 613-626

    • DOI

      10.1007/978-94-017-9918-8_28

  • [学会発表] 細胞の微小重力感知におけるストレス線維の張力の関与2015

    • 著者名/発表者名
      小林 剛、橋爪藤子、東端 晃、矢野幸子、二川 健、曽我部正博
    • 学会等名
      BMB2015
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] 動物細胞における微小重力環境センシング機構2015

    • 著者名/発表者名
      小林 剛, 曽我部正博
    • 学会等名
      日本宇宙生物科学会第29回大会
    • 発表場所
      帝京大学板橋キャンパス(東京都板橋区)
    • 年月日
      2015-09-26 – 2015-09-27
    • 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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