研究課題
月や火星などで人類が長期的に生活することを想定すると、生命維持に必要な酸素と水を作るだけでなく、安定した生命維持環境を長期的につくる必要がある。まず、月面で水を安定供給する方法の基礎研究を行った。そのため、月面のレゴリスに多く含まれるイルメナイト結晶(FeTiO3)を真空加熱して酸素を、あるいは、月面土壌に含まれるプロトンなどから水素をつくり、その水素雰囲気中で低温で水を、直接、効率よく抽出する方法を考えた。NASAの計画では水素は地球から運搬するとしているが、プロトンを含む太陽風が月面に打ち込まれていることからして、月面で水をつくる可能性を検討した。、その水を使ってつくるコンクリート主成分鉱物(水酸化カルシウム)の安定性を、光分解光学系を利用した”その場”観察法を駆使して次のステップとして研究した。地球上のセメントの劣化では炭酸ガスをふくむ炭酸水との反応が重要である。この様子を位相シフト干渉法などを駆使して変質速度をナノレベルで測定し、月面での変質速度と比較する基準値を得た。それによると、水酸化カルシウムはCO2を含む水と反応することで、結晶近傍にアラゴナイト(Ca(CO3)2)を水酸化カルシウム結晶表面に析出させ、それが、時間とともに別の構造をもつ、つまり、別の多形であるカルサイト、Ca(CO3)2に変化して劣化が進むことがわかった。つまり、変質には、もとの結晶の一部溶解、次の準安定相の核形成が、またその相の一部溶解といいう一連のプロセスが連続的に生じることが必要であることも初めてわかった。
2: おおむね順調に進展している
コンクリートの変質研究は構成物である鉱物界面でのミクロな現象としては捉えられてこなかったが、本代表者らは、コンクリートの主要な鉱物である水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の結晶界面で、炭酸水と反応して方解石やあられ石に変質していく過程を、ナノレベルでの“その場“観察することに初めて成功した。その後、これらの結晶の成長メカニズムを、表面構造、成長速度、溶解速度などの観点で調べることができた。併せて、その変質や交代反応速度を月面での劣化速度と比較するための対象データが取得できたことで、順調に研究が進捗していると判断できる。
月面と類似試料を用いて水の発生を分子レベルで確認する。その結果をAMS2016やICCGE-18などの国際学会で発表予定。なお。ESAの研究者と実験結果についての議論はこれまで通り継続する。
東京と大阪の出張の取りやめによる。
結晶成長学会に参加する参加費等として使用する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 10件、 招待講演 8件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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