研究課題/領域番号 |
26506015
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 優志 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (30342801)
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研究分担者 |
嶋田 幸久 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (30300875)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重力 / 細胞壁 / 伸長領域 / 支持領域 / シロイヌナズナ / オーキシン |
研究実績の概要 |
申請者は既に重力屈性における花茎の伸長領域と支持領域を明らかにしているが、抗重力反応におけるこれらの領域の詳細は不明である。解析初年度は抗重力反応における伸長領域と支持領域を明らかにした。解析2年目ではまず過重力育成システムを確立し、過重力環境下では伸長領域がどのように変化するかを調べた。ファルコンチューブで花茎の長さが5 cm程度にシロイヌナズナを育成した。ファルコンチューブを遠心分離器のスイングローターで24時間遠心し15 gの重力を与えた。ファルコンチューブの反対側には電灯を設置し、1 gのコントロール処理区と光条件を同一にした。24時間後の花茎の長さを計測し、24時間の伸長量を計測した。その結果、1 gのコントロール処理区では24時間で1 cm以上の伸長を示したのに対し、15 g過重力環境下では0.5 cm以下しか伸長しなかった。このことは花茎の伸長量が重力の影響を受けていることを示している。 花茎の伸長にはオーキシンによる細胞壁のゆるみが関与することが知られている。15 g過重力環境下における伸長抑制にオーキシンが関わっているのかどうかを検証するために、オーキシン応答性遺伝子であるAux/IAA19の発現を1 gコントロール処理区と15 g過重力環境下で比較した。Aux/IAA19の発現は花茎の先端側でも基部側でも15 g過重力環境下で減少していた。このことは15 g過重力環境下でオーキシンの生合成またはオーキシンの感受性が抑制されたことを示すと考えている。 さらに、高速液体クロマトグラフィーカラムに分子量分析用のTSKgel G5000PWXLを購入し、細胞壁多糖の分析システムを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24時間の15 g過重力育成システムを確立することが出来た。これまでの過重力研究は芽生えの胚軸を用いた研究が多かったが、本研究でより成長の進んだ花茎を用いた実験システムを確立することができた。植物の成長における重力の影響を調べる上で大きな進歩だと考えている。さらに、15 g過重力環境下ではオーキシン応答性遺伝子の発現が減少していることを明らかに出来たことから、申請者が当初考えていたように、抗重力応答における花茎の伸長にはオーキシンが関与していることが示唆され、計画は概ね順調に進展していると言える。今年度には細胞壁多糖分析システムも導入したので、来年度は15 g過重力における伸長抑制とオーキシンと細胞壁多糖との関係を明らかにしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに24時間の15 g過重力育成システムを確立することが出来、15 g過重力環境下では花茎伸長の抑制とオーキシン応答性遺伝子の発現が減少していることを明らかに出来た。しかし、過重力条件下でのオーキシン応答性遺伝子の発現減少がオーキシン生合成抑制によるものかは不明である。研究最終年度ではオーキシン生合成阻害剤などを組み合わせて、過重力による伸長抑制がオーキシンの機能発現にどのような異常をもたらしているのかを明らかにする。また、その時の細胞壁多糖の分子量変化についてもオーキシンがどのように関わるのかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では2年目にマイクロアレイを行う計画になっていた。しかし、過重力処理により花茎の伸長抑制が見られたことから、オーキシンとの関連性を明らかにすることを優先してオーキシン応答遺伝子のRT-PCRを行った。その結果、過重力処理でオーキシン応答遺伝子の発現が減少していることが明らかになった。本結果をふまえて、次年度にマイクロアレイ解析を行い、過重力刺激とオーキシンとの関係を包括的に明らかにする予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
マイクロアレイ解析は計画最終度予算に組み込んで適切に行う。また、それ以外の最終年度予算として1)過重力処理サンプルの育成と多糖分析に50万円、2)オーキシン分析における分析消耗品および関連試薬に50万円を、3)その他一般プラスチック消耗品および一般的分子生物学実験用試薬・キット類に40万円を、4)論文原稿英文校閲および投稿料に10万円を計上する。
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