研究課題
計画2年目までの研究で、24時間の15g処理という過重力環境ではシロイヌナズナ野生型Col-0株の花茎の伸長がコントロール処理に比べて抑制されていることを見出してきた。花茎の伸長にはオーキシンによる細胞壁のゆるみが関与することが知られており、過重力刺激によりオーキシン応答性遺伝子であるAux/IAA19遺伝子の発現が花茎の上部でも下部でも抑制されることを明らかにした。このことは過重力がかかると花茎のオーキシンが減少して細胞強度が増して伸長が抑制されるというモデルを示していると考えている。そこで計画最終年度では過重力刺激が細胞壁に与える影響とオーキシンに与える影響に注目して解析を行った。細胞壁関連遺伝子では過重力刺激により花茎上部でキシログルカン転移酵素遺伝子であるMERI5の発現が高く、花茎下部では過酸化酵素遺伝子のPER64の発現が減少した。これらの遺伝子発現変化はいずれも細胞壁を緩ませて伸長成長を促すものであり、過重力刺激による花茎伸長の抑制とどのような因果関係にあるのかはなお慎重な解析を必要とすると考えている。一方、過重力刺激がオーキシンの内生量にどのような影響を与えるかを調べるために、過重力刺激を行った花茎の内生IAA量をLC-MS/MSを用いて測定した。その結果、過重力刺激により内生IAA量が減少している結果が得られた。この結果は、オーキシン応答性遺伝子であるAux/IAA19遺伝子の発現が花茎の上部でも下部でも過重力刺激により抑制される結果とよく合致している。Sogaらは、過重力刺激によりアズキ上胚軸のアポプラストpHが上昇することを示している(Soga et al. 2000)。オーキシンはアポプラストのpHを低下させるので、過重力によりオーキシン内生量が減少するという我々の結果は、過去の生理学実験の結果ともよく合致すると考えている。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 81 ページ: 印刷中
10.1080/09168451.2017.1313694