研究課題
根の重力屈性に関しては既存の遺伝子発現研究が多く報告されていたが、植物地上部の重力応答に関しては2014年に谷口らが花茎における重力屈性のインジケーターとして使えるオーキシン応答性遺伝子Aux/IAA2、Aux/IAA5をはじめて報告した。これらの遺伝子とこれまでに我々の見出した低濃度オーキシン応答遺伝子、高濃度オーキシン応答遺伝子それぞれの発現をシロイヌナズナの重力刺激後の花茎で観察したところ、屈性を示す部位での応答は再現され、屈性を示さない部位(より基部側)でも重力方向でAux/IAA5の発現が高くなるなどオーキシン応答が起こっていた。「オーキシン濃度が支配的に正と負の重力屈性を引き起こす」という仮設を検証する課題として研究が始まったが、オーキシン濃度だけでは重力屈性を説明できないことが明らかとなった。そこで、地上部の負とゼロの重力屈性の違いを引き起こすメカニズムについて更に研究を行った。負の重力屈性が起こる部位は地上部の伸長領域であり、オーキシン濃度勾配が生じても重力屈性がゼロである部位は地上部のより基部側の非伸長領域であった。伸長領域と非伸長領域を決定するメカニズムが地上部の負とゼロの重力屈性の違いを引き起こしていると考えられた。さらに、この伸長領域と非伸長領域の区別、重力屈性が起こるかどうかはブラシノステロイド・ブラシノステロイド阻害剤によってコントロールできることがわかった。古くからオーキシンとブラシノステロイドは重力屈性の起こる速度や屈曲角度に対して相乗的に機能することが報告されており、本研究の遺伝子発現応答の結果からもそのことが裏付けられたと考えている。本研究結果については2016年の植物生理学会で一部報告し、その後明らかにした屈性を示す伸長領域と屈性を示さない非伸長領域の間の細胞伸長、強度に関わる分子の応答の解明とともに現在は論文投稿準備中である。
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Plant & Cell Physiology
巻: 58 (3) ページ: 598-606
10.1093/pcp/pcx007