研究課題/領域番号 |
26506017
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
若林 和幸 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10220831)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重力 / イネ / 成長 / エチレン / 過重力 |
研究実績の概要 |
本研究では、重力環境の変化に対して植物が応答する過程に、植物ホルモンのエチレンがメディエーターとして働いているのかどうかを検証し、その作用機構を明らかにすることを目的としている。2015年度は、前年度に機器の故障で実施できなかったエチレン生成量について、各条件の検討を行った後、分析を試みた。故障して修理不能となったガスクロマトグラフィー装置は、パックドカラムを装着していたため、分析感度が低かったが、更新した装置ではキャピラリーカラムに変更したことで分析感度が上がった。先ず、植物体から生成するエチレン量を測定するために、密閉型プラスティックチューブに調製した寒天培地上にイネ種子を播種し、暗条件下で生育させた。一定期間培養したのち、容器(プラスティックチューブ)内のエチレン量の測定を行った。次に、同様の培養条件で、過重力を与えて生育させた芽生えでのエチレン生成量を調べたところ、若干の変化が見られたことから、培養時間などの条件を変えて、さらに検討を続けている。また、1g条件下で、エチレン生成を促進させた(エチレン合成の前駆物質であるACCを与えて生育させた)芽生えの成長と、逆に、エチレン生成を抑制した(エチレンの合成阻害剤を与えて生育させた)芽生えの成長について検討を行った。 一方、イネの芽生えは水中でも生育出来ることが知られており、水中生育では、浮力のために物体にかかる重量の大きさが軽減されることから、部分的に微小重力に似た環境(擬似微小重力環境)が再現できると考えられている。植物が生育するほどの長時間(期間)にわたる真の微小重力環境を、地上において作り出すことは不可能であることから、過重力とは逆の微小重力環境を模擬する系として、水中生育イネ芽生えを用いた実験を開始した。先ず、生育条件などの基礎的条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に故障して修理不能となったガスクロマトグラフィー装置を更新して、エチレン生成量の分析を進めた。実施状況に記したように、新しいガスクロマトグラフィーではキャピラリーカラムを装着したことで分析感度が上がり、植物体から生成するエチレン量を測定することが出来るようになり、予定していた実験が進みだした。
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今後の研究の推進方策 |
更新したガスクロマトグラフィー装置を用いて、エチレン量の分析を引き続き行う。培養期間や薬剤処理、重力環境を変えて生育させた芽生えにおけるエチレン生成量を調べる。また、過重力条件下で生育させた芽生えとエチレン(エチレン合成の前駆物質であるACC)を与えて生育させた芽生えを用いて、その遺伝子発現をcDNAマイクロアレイ法により調べて比較検討することで、過重力刺激に応じて発現が変化する遺伝子のなかでエチレンを介して誘導されるものを探索する。特定された遺伝子について、想定される機能から作用機構を推定する。さらに、細胞壁代謝の調節おけるエチレンの関与を調べるため、重力環境の変化によってそのレベルが変化することが報告されている、細胞壁結合性フェノール化合物と細胞壁ペルオキシダーゼ活性に注目して解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に予定していた実験が機器の故障で2015年度にずれ込んだことで、2015年度に予定していた実験の一部を2016年度に持ち越したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に予定していた実験を本年度に実施することで使用する。
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