本研究では、重力環境の変化に植物が応答する過程において、植物ホルモンのエチレンがメディエーターとして働いているかどうかを検証することを目的としている。2016年度は、黄化イネ芽生えを用いて、シュートの成長、エチレン生成、遺伝子発現に対する過重力の影響と、エチレン合成の前駆物質であるアミノシクロプロパンカルボン酸(ACC)を与えてエチレン生成を促進させた場合の影響について調べた。 シュートの伸長成長は、過重力処理により抑制されたが、生重量の抑制は僅かであり、特に過重力処理の期間が短い(1日程度)の場合は、ほとんど抑制されなかった。従って、黄化イネ芽生えでも過重力処理によりシュートの肥大が起こることが示された。一方、ACC処理では、シュートの伸長成長、生重量共に促進された。次に、密閉型容器内で一定期間生育させた芽生えに、過重力を与えたときのエチレン生成量を、ガスクロマトグラフィー装置を用いて測定した。対照と比べて過重力処理を行った場合ではエチレン量が増加しており、過重力処理後1日程度の間で増加が大きかった。1g条件下で、ACCを含んだ培地で生育させた場合でも、エチレン生成量が増加していたことから、ACCレベルが過重力下でのエチレン生成量の変化に関係している可能性が示唆された。最後に、シュートにおける遺伝子発現をcDNAマイクロアレイ法により調べたところ、対照に比べて過重力条件下で発現レベルが増加する遺伝子が約130、減少するものが100程度あることが示された。さらに、対照とACC処理では、増加するもの減少するものが、それぞれ50程度あることが示された。このデータを元に、詳細な解析を続けている。
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