研究課題
本研究では、気球で成層圏まで上昇した後、気球からゴンドラを切り離し、パラシュートで落下する最中に、成層圏中に浮遊する微生物を採集することを目指す。この採集方法で成層圏中における受動的取り込みにより微生物の採集ができるのかどうかの確認と装置の最適化が必要である。そこで、風洞実験と流体計算によるそれらの確認作業を実施した。筒にノズルやインパクター板を取り付けた模型を製作して風洞実験を行い、装置内の大気の流れを調べる一方、風洞の流れ中に蛍光ビーズ(蛍光を発する微粒子。サイズは1ミクロンと5ミクロンの2種類)を放出し、模型で確かに微粒子が捕集できるかどうか調べた。大気圧条件下と成層圏気圧下(0.05気圧)で行った。ノズルのスロート部の直径や、インパクションプレートの直径、ノズルとインパクションプレートの距離、流れに対する装置の角度、流速、風洞内の圧力などを変えながら測定を行った。その結果、全ての実験条件において放出した微粒子の一部が確かにインパクター板上に捕集できること、それを蛍光顕微鏡で観察できるということを確認した。受動的インパクター型微粒子採取装置が、気球用微生物捕集装置として機能することを確認することが出来た。また、風洞実験で測定できるのは離散的箇所での静圧のみであるため、装置内の流れを知るために、流体計算を行い、風洞実験結果との比較を行った。まず、ノズルのみ、ついでインパクションプレートありの場合の計算を行った。得られた結果(各圧力測定点の圧力)は、風洞実験の結果と良く一致することが判った。今回の結果は、そのような条件に於ける微生物採集に対してポジティブなものである。
2: おおむね順調に進展している
2015年度夏の気球実験へ向けて、採取装置の検討と開発がほぼ予定通り順調に進んでいるため。特に、最も重要であり困難である受動的インパクター型微粒子採取装置の原理実証と最適化検討において重要な知見を得た。
これまでに行ってきた採取装置の検討結果を踏まえ、採取装置を開発・製作し、気球実験を行い、先行研究に比べ格段に地上微生物の混入の少ない成層圏微生物採取実験を実施する。また、採取試料を分析し、成果を論文にまとめ公表する。今年度実験の結果を踏まえ、来年度以降の気球実験に備え採取装置や分析方法の改善方法を検討する。
風洞模型等の消耗品を大学の工作センターで製作したため、当初の想定よりも使用予算が少なく抑えられた。
北海道で気球実験を行い分析を行うため、旅費として使用予定。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Nature Geoscience
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