研究課題
昨年度までに、尾部懸垂前の活動状態がヒストン修飾による転写活性制御に影響を与えることを確認してきたが、そのような変化がその後の廃用性筋萎縮に与える影響は不明である。本年度は、前年度までの実験および解析を継続し、筋萎縮の誘導・抑制に関わるエピジェネティクス制御機構について検討した。8週間のトレーニングおよび活動制限後に尾部懸垂を実施し、尾部懸垂開始前、開始3日後、および7日後にそれぞれヒラメ筋を摘出し、生化学的な解析を行った。その結果、筋萎縮関連遺伝子であるAtrogin-1、MuRF1およびGadd45α mRNA発現量は尾部懸垂により時間の経過とともに増加したが、8週間の持久的なトレーニングを行わせることによって、その増加は有意に抑制された。そこで核タンパク質を分画抽出し、グローバルなレベルのヒストン修飾状態を評価した結果、リジン9残基のアセチル化状態に有意な変化は認められなかったが、リジン9残基のトリメチル化にはトレーニングによる主効果が認められた。また、尾部懸垂3日後では活動制限によるMuRF1およびGadd45α mRNA発現量の有意な亢進が認められたが、その要因については不明である。これらのことから、宇宙環境をシミュレートした尾部懸垂による筋萎縮を誘導する前にトレーニングを行わせることによって、筋萎縮の誘導に関連した遺伝子の発現の増加を軽減させることが可能となる。これは、長期間のトレーニングにより低いレベルで維持されたリジン残基9のトリメチル化がマッスルメモリーとして筋内に記憶されていたことによると考えられる。しかしながら、本研究のトレーニング条件ではヒラメ筋重量の低下を抑制するには至らなかったことから、最適なトレーニング条件や筋萎縮の抑制に関わるエピジェネティクス制御機構について今後さらに検討を行っていく必要がある。
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