研究課題
宇宙微小重力環境下の血液循環動態およびその調節機構における静脈血行動態の解明は重要である。しかしながら、簡便かつ精度良く静脈系をモニターすることが難しく、この分野の研究が遅れている。また、三尖弁狭窄症、右室肥大、右心不全、肺高血圧症、三尖弁閉鎖不全症、心不全などの診断、治療には、右心機能の的確な把握が必要である。我々は、外耳道を経由して検知される微弱な体振動から右心機能を非観血、非侵襲的に診断する手法を考案した。本研究では、外耳道より検知される体振動を用いた右心機能診断装置の開発とその計測データの生理的妥当性を検証することを目的としている。低周波領域に特性を有する差圧センサを用い試作した装置について、精度、正確度、安定性などの基本的性能を検証した。得られた計測データの生理的妥当性については、心音および循環動態解析システムを用いての検証を行い、頸静脈圧変動を捉えていることが確認された。さらに、開発した装置による体位変換実験、航空機実験においても、重力変化に対応した静脈血行動態を外耳道内圧測定装置により観察することに成功した。しかし、低周波差圧センサでは小型化が難しい。実用化するには、ウェアラブルで長時間安定した測定が可能な装置とする必要がある。そこで、次に実用化を目指した新たなセンサとして低周波領域に特性をもたせた音響センサを開発した。新たに開発した装置による体位変換実験,航空機実験,飲水実験を行い,音響センサによる外耳道内圧計測の生理的妥当性を検証した。差圧センサ同様、音響センサにより得られる外耳道内圧波形は、静脈波形と非常に類似しており、心電図および心音図とのタイミングからも頸静脈波形を捉えていると考えられた。これより、将来的に宇宙環境や日常生活における健康管理指標としての有意性を示すと共に、右心機能の非侵襲測定の新たな指標としての可能性を示すことができた。
本研究成果は、2016年9月25日付けの朝日新聞に掲載された
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