研究実績の概要 |
本年度は生後8週齢から約1年6カ月齢までのラットを用い、立ち上がり姿勢(Head-up tilt:HDT)での実験を遂行できた。それにより、8週齢ラット群、30週齢から約12か月齢群のそれぞれのHUT時の循環動態(血圧、総頸動脈流量、心拍数)の変化を明らかにし、比較できた。生後から老齢期に至るまでの発達と加齢変化を調べるには、異なる週齢で実験群の幅を狭めて実験を進めることが必要で、平成27年度以降も動物実験で基礎的データを得ることに研究を修正を加えて、循環因子の日齢曲線・経時的変化の詳細を明らかにする。その実験計画の基盤となる幼弱、成熟、老齢期ラット3群のデータを得られた。 主な結果は次の通りである。成熟群の結果(SDラット, ♂, 13-19週齢, 420-595g,13匹)は、 HUT開始後、BPの平均血圧はHUT前のcontrol値87.4±16.3 mmHg (mean±SD, n=12)から⊿14.7±6.8(-16.4%) 、BFは5.57±1.96 ml/minから⊿1.61± 0.96 (-28.3%)、何れも有意に減少した(p< 0.001, paired t-test)。その後、各値は増加に転じて一定値となりBPはcontrol 値に近づく (⊿BP -2.5±9.2 mmHg, -2.2%, ⊿BF -1.10±1.04 ml/min, -19.9%)。その時、HRはcontrolの385±45.4 bpm から⊿11.3±13.5 bpm(+ 3.1%)増加し(p<0.05)、SAD後では、その増加は見られなかった。また、HUT状態が長くなるとBPは保たれるがBFは有意に低下し、SAD後では両者の減少率が大きくなった。BFのHUT時間の差は明瞭ではないが、30分ではBP変化率は大きく、BRによる僅かなHR減少がSAD後では見られなかった。 加齢過程ラット(SDラット, ♂, 31~90週齢、590-764g,5匹)では、上記の成熟ラットの結果と比較すると、血圧はHUTの状態で減少し、その後増加に転じて 一定値へ達する過程は同じだが、それら変化点へと達する時間は老齢ラットで極めて長かった(92.6 ±56.4sec) 。
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