研究課題/領域番号 |
26506028
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
橋本 博文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50272175)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 火星 / 低圧 / スプラウト栽培 |
研究実績の概要 |
これまで低圧環境下での植物栽培を実現するために、植物種子発芽率の低圧耐性について調べてきた。発芽に必要な大気成分は酸素だけなので、酸素分圧をパラメータとして気密容器内で、いくつかの植物の発芽率を調べた結果、モロヘイヤの場合、時間はかかるが1kPaでも発芽率が70%もあり、かなり高いことがわかった。つまり、この結果は火星の大気圧下であっても、うまく工夫すれば、気密性の高い温室設備なしで植物の栽培、少なくとも芽だし野菜(スプラウト)の栽培は可能であるということを示している。また、種子を発芽させるためには、純酸素ならば1kPa あればよいことがわかったが、もちろんそれだけではダメで、液体の水が必要不可欠である。しかし、実際には、室温で1kPa の圧力環境では水が液体で存在することはできない。上記の実験は地球大気をそのまま真空ポンプで1/20 気圧に減圧したもので、全圧は5kPa、酸素分圧1kPa の空気を使用している。ところが、火星表面の観測から火星表面に流れた水の形跡が確認されており、地下水のようなものが火星表面に噴出した後、しばらくは液体として存在していることを示している。つまり、平衡状態では「室温で1kPa の圧力では水が液体で存在することはできない」が、非平衡な状態では短い時間、存在し得るのである。この事実を利用して、種子を発芽させる間、湿らせておくことは可能であると考えられる。これらのことを踏まえ、平成26年度は、真空容器に圧力計と蛍光式酸素モニター、酸素と水の供給口などを取り付けて、1kPaの低圧下で液体の水が存在しうることを確認する実験を行った。その結果、真空容器内に水を入れると圧力は蒸気圧(約3kPa)に達した状態で液体の水が維持されるが、真空ポンプの排気能力からそれより圧力を下げることができないことがわかった。また、この状態でキュウリの種子の発芽も確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成26年度の研究計画は、「小型の真空容器を製作し、1kPa の酸素圧力を維持したまま水を供給して、非平衡な環境下でロックウール等の培地に浸み込ませる。水の供給量を調整して種子の発芽試験を行い、種子が発芽できる水分が培地に維持できることを確認する。必要な水分が維持できない場合は、培地の大きさ、材質、形状を再検討し、適当な条件がわかるまで試験を繰り返す。」ということであり、これらはおおむね実現できたと考えられるから。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、水の蒸気圧以下に圧力を下げる工夫をして、実際の火星大気圧下での栽培実験を実現し、計画通り、火星大気中の非密閉容器を模擬した実験装置を完成させ、低圧での発芽実験を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を実施しながら試行錯誤を行った結果、研究は計画通りに進めることができたが、使用額に端数が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
端数はわずかなので、次年度の物品購入費として使用したい。
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