本研究は、将来、人類が火星に進出して長期滞在するための安定した食料供給を実現するため、火星の大気圧に近い1kPaでの芽だし野菜(スプラウト)栽培に挑戦することを目的としている。これらの研究目的を達成するため、第一段階として平成26年度に「小規模な装置により非平衡な状態では短い時間、水が液体として存在し得ることを確認する。」第二段階として平成27年度に「この装置を大型化したものを製作し、必要な環境を制御できることを確認する。」第三段階として平成28年度に「実際の種子を用いてこの装置でスプラウト栽培ができることを確認し、技術として確立する。」ことを計画した。 しかし、小規模な装置で発芽実験を繰り返すうちに、これまで試験に用いてきた種子でも発芽しない場合があり、再現性を詳しく確認し、いろいろな種類の種子で試験を行う必要性が発生した。これは今回の科研費で導入したマノメータと酸素モニターにより厳密な条件設定が可能になったからである。よって、第二段階には進まず、厳密な圧力と酸素分圧設定により、低圧で発芽する種子を市販されているものを対象に調べ直すことにした。 この低圧環境下で発芽する種を効率よく見つけるために、約40種類の種の発芽実験を同時に行うことができる栽培装置を製作し、第一段階としてキュウリ、ナス、ブロッコリ、ダイコン、インゲンから42種類の種子を選び、1/20の減圧大気下での発芽実験を行った。 その結果、ブロッコリ、ダイコン、インゲンは、発芽するものが多く、キュウリは種類によって異なり、ナスはいずれも発芽しないことが明らかになった。しかし、100kPaの大気圧中での対照も発芽しなかった場合もあり、今後は栽培方法の検討も必要である。
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