研究課題
動物は加速変化を感知する機能を内耳に有しているが、どの程度の変化をどのような仕組みで感知するかについて、分子レベルでは明らかになっていない。また、変化を感知するシステムを有している一方で、変化が恒常的な状態となった場合は、新たな環境に適応(対応)することができる。つまり、感知するシステムは鋭敏でかつ柔軟である。マウスを遠心過重力下(1.4G)で飼育すると、遠心開始直後はそのG変化に応じ、動かなくなる(伏せる行動を示す)。しかし、遠心飼育を続けることで、1-2日で動けるようになり、5日ほどで新たな環境に慣れ、これまで(1G)と同じように活動できるようになる。組織・分子レベルで平衡機能(前庭機能)を詳細に調べるためには、この個体応答(活動)を定量化し、組織サンプリングの結果と総合的に解析する必要がある。遠心機に設置し個別飼育可能なカメラ付きケージでマウスを飼育し、その活動を動画から解析する「ピクセル解析系」を構築した。経時時刻対アクテビティデータのヒストグラムをlog変換を行い、左右の2つの山(活動期・不活動期)に分け、その山間の極小値算出することから活動期・不活動期それぞれの時間を導き出した。これまでは、S/N比の高い明期においてのみ解析が可能であったが、マウスの活動は明期・暗期で大きく異なることが知られているため、どちらの光量においても解析可能なパラメーターの設定に成功した(最終年度成果)。定量化の結果により、遠心過重力直後1日の活動量は激減し、その後緩やかに回復しおおよそ5日目に元と同じレベルまで回復することが分かった。加速変化を感知するシステムはこの期間内で大きく機能変換を行っていることが示唆された。これらの成果は、遠心飼育時のどの時期の加速変化感知システムの状態を組織評価するかを判断する上で有用である。
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J Physiol Sci.
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