線虫を宇宙環境に滞在させた際に主に神経系の遺伝子の発現が低下することを見出した。これらの遺伝子をRNA干渉法や遺伝子変異により地上で発現を低下させて寿命を見たところ、このうち7遺伝子について寿命の延長を認めた。そこでこれらの遺伝子が老化と重力にどのように関与するかを研究した。宇宙環境で発現が低下した遺伝子について線虫の加齢に伴う発現変化を調べた。glc-4では加齢に伴って1.7倍に増大した。cha-1については加齢に伴って1.4倍低下した。gar-3は加齢で1.6倍に増大、ロドプシン様GPCRは1.2倍に低下、ins-35は2.4倍低下、shc-1は変化しなかった。次に低速遠心機により100Gの過重力を与えた際の遺伝子発現変化を調べた。glc-4では1.5倍に低下した。cha-1では1.4倍に低下、gar-1では1.1倍に低下、F57A8.4では1.6倍に低下、shc-1では1.3倍に低下した。寿命制御に関与することが知られるインスリン/IGFシグナルとの関わりを明らかにするために、インスリン/IGFシグナル下流の転写因子daf-16の欠損変異体での発現と過重力100Gによる影響を調べた。glc-4ではdaf-16変異体で2.1倍に増大、100Gで低下した。gar-3では1.9倍に増大し100Gで低下した。F57A8.4では1.5倍に増大し100Gで低下した。ins-35では2.2倍に低下し100Gで増大した。cha-1とshc-1では野生体と同様であった。宇宙環境で発現が低下した主に神経系の遺伝子はインスリン/IGFシグナルに関与するものと関与しないものがあり、過重力に対しまた加齢に対し様々に応答することがわかった。
|