研究課題
我々は、フォワード・ジェネティクスの手法を用いて覚醒時間の顕著な短縮を示すSleepy家系を樹立した。Sleepy家系マウスは、AMP-activated kinase-related kinaseに属するセリンスレオニンキナーゼであるSik3遺伝子に変異をもつ。本年、Sleepy変異Sik3遺伝子の睡眠覚醒の制御という新たな機能についてNature誌に報告したが、Sleepyマウスは過眠とともに肥満の表現型を示す。Sik3ノックアウトマウスを用いた先行研究において、エネルギー負荷によって肥満を引き起こすことが報告されているが、SleepyマウスにおいてもSleepy変異Sik3が睡眠覚醒のみならず、摂食行動や代謝制御において重要な機能を担っていることが示唆された。Sleepyマウスの摂餌量は、同腹の野生型マウスに比べて顕著な差が見られなかったが、Sleepyホモ変異およびヘテロ変異ともにエネルギー消費において有意な低下が観察された。また、加齢や体重の増加に伴って血糖値の顕著な上昇がみられたが、その程度はホモ変異体においてより顕著であった。睡眠異常と体重の関わりについては、様々な報告があるが、Sleepyマウスにおける睡眠時間の延長は、体重に差が出る前の10週齢前後の若齢期で既に顕著であり、体重の増加(加齢)による差は遺伝子型による差に比べて無視できる程度であった。Sleepyマウスは、体重の表現型に関しても睡眠と同じ染色体に責任領域があることが、QTL解析の結果明らかにされている。一方で、本研究の結果から、表現型の出現時期が異なることから、今後、Sleepy変異SIK3の脳内での発現部位や時期、発現の量的変化など、時空間的解析を進めることにより、睡眠と代謝を制御する分子機序やそのネットワーク機構を明らかにする予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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