研究実績の概要 |
主観による睡眠時間は死亡率や生活習慣病等と関連があることがコホート研究等で報告されている。これらの研究も含め、我が国での一般人の大規模な疫学研究では、これまで実施上の制約から、睡眠時間を主観で評価しているものがほとんどであった。この点が研究の限界になっていた。 そこで本研究は、大規模集団にて活動量計を用い、客観的な睡眠時間の推計を行った。初年度に、ゲノムコホート研究である日本多施設共同コーホート研究大幸研究の二次調査の参加者に、活動量計による一週間の睡眠計測と睡眠関係の質問紙(ESS,MEQ,PSQI等)の記入を求め、2,000人以上のデータを得た。このデータから、自己申告による睡眠時間と活動量計にて計測した睡眠時間の相関は高くはなく、乖離がある場合も多いことが明らかになった。また、高血圧症は、主観の短時間睡眠より、客観的な短時間睡眠の方が有病率は高く、特に主観では評価できない睡眠効率(活動量計では評価可能)は、高血圧症の有病率と強い関連が認められた。このため、生活習慣病予防のためにも睡眠の客観的な計測が必要であることを明らかにした。 さらに、この集団から得られた血液検体(2,000人以上)にて、4つの遺伝子多型(セロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTT-LPR)、GH1 T1663A, PER3 VNTR, BDNF Val66Met)について、遺伝子解析を行った。このうち、セロトニントランスポーターは、加齢による朝型化と関連を示した。なお、この4つの遺伝子多型は客観的な睡眠時間とは関連が認められなかったため、今後さらに、睡眠時間と関連がある遺伝子多型を更に探索していく必要がある。
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