本年度は、昨年度に見出したショウジョウバエの睡眠制御に関わる中心複合体PB(protocerebral bridge)ニューロンの解析を行った。dTrpA1チャネルを用いたニューロンの活性化により睡眠量の著しい減少を示したGAL4ドライバー系統(以後、PB-GAL4)において、温度感受性ダイナミン(shibire[ts1])を発現させて、30℃でシナプス伝達を抑制したところ、睡眠量が有意に増加した。PB-GAL4では脳以外に、胸部神経節でもGAL4の発現が見られたことから、胸部神経節のみでGAL80(GAL4の阻害因子)を発現するトランスジェニック系統と組み合わせて、脳だけでdTrpA1を発現させて活性化しても、睡眠量の顕著な減少が見られた。昨年度、PB-GAL4を用いたMARCM法により見出したニューロン群は、中心複合体のPB、FB(fan-shaped body)、NO(noduli)にそれぞれ投射していた。そこで、同様の投射パターンを示すニューロン(PB-FB-NOニューロン)をラベルすることが報告されているGAL4系統(c465)を用いて、PB-FB-NOニューロンを活性化させたところ、PB-GAL4と同様に睡眠量が著しく減少した。以上の結果から、睡眠制御に関わる新たなニューロンとしてPB-FB-NOニューロンが同定された。PB-FB-NOニューロンに、後シナプスまたは前シナプスにそれぞれ局在するGFPを発現させることで、入出力シナプス部位を明らかにした。我々がこれまでに同定した睡眠制御に関わるPPM3クラスターのドーパミンニューロンは、FBとNOに投射する。そこで、このドーパミンニューロンとPB-FB-NOニューロンの機能的関係を現在解析中である。
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