研究課題
平成26年度においては、日本大学医学部附属板橋病院睡眠センター通院患者のうち、睡眠障害国際分類第2版において概日リズム睡眠障害睡眠相後退型と診断された10例について、臨床背景についての検討と携帯型活動量測定装置を用いた客観的な睡眠覚醒記録を行い、治療的介入を行った。治療介入としては、第1にメラトニン受容体作動薬であるラメルテオン(8)0.25錠を17時に投与し3ヶ月間観察した。これにより10例中6例が社会的に望ましい時間帯、ないし患者本人が臨む時間帯に睡眠をとることが可能になった。第1の治療戦略が奏功しなかった場合には、第2の治療として青色光を用いた高照度光療法を第1の療法に加えて4週間行った。治療開始時の起床時刻を1時間早めその時間帯に高照度光照射を指示した。これにより、1例が患者本人が臨む時間帯に睡眠をとることが可能になった。残り3例について、患者の希望があり、2014年に臨床使用が可能になったオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(20)1錠を、概日リズム睡眠障害睡眠相後退型の入眠障害に対して、望まれる入眠時刻に毎晩投与したところ1例で入眠困難が改善するとともに起床困難も改善した。1例においては入眠障害は改善したものの、起床困難が続き、睡眠時間帯としては最終的に望まれるレベルには達しなかった。残り1例については1ヶ月間の投与で改善は明らかでなかった。時間療法が適応となる症例は見られなかった。これらの症例について、それぞれの作用機序について明らかにするため、活動量測定装置で得られたデータをさらに解析中である。
2: おおむね順調に進展している
入院による治療を想定して初期プロトコールを作成したが、実際に経験的に投与法や睡眠衛生指導が全般的に改善され効果が高くなったため、外来におけるプロトコール実施が可能になった。新規薬剤の導入に関しても奏効する症例があることが明らかになり、統合的時間生物学治療法の開発に対しては概ね順調に進んでいると考えられる。ただし、治療計画が順調に進んだため、必ずしもメラトニンリズムなどの検査データがフルにとれた症例が多くないことも挙げられる。この点については次年度に改善する方策を立てる。
概日リズム同調機構不良に加え睡眠恒常性維持機構の機能不全により長く覚醒していても睡眠圧による眠気が起こりにくいことを世界で初めて明らかにした。しかし、この点に焦点を当てた治療法は未だ開発されていない。本研究課題は、高照度光療法を用いた概日リズム同調機構改善に、世界で初めて時間療法と断眠を組み合わせて睡眠恒常性維持機構不全を同時に改善する画期的治療法を開発するものである。現在、治療プロトコールで臨床症状の改善の得られた症例を解析することで、治療介入が睡眠覚醒調節のいかなる制御機構に作用したのかについて明らかにしていく。
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