研究課題
概日リズム睡眠障害は、体内時計の発振する概日リズムと睡眠をとる時間帯との同調の不全により睡眠が障害され、学業や職業の問題や生活の支障を来す。このグループの睡眠障害の中で睡眠相後退型は10代~20代に0.5~1.0%にみられ、概日リズム機構の機能不全により睡眠時間帯が遅れたまま戻せない概日リズム睡眠障害である。これを短期間に確実に改善するような治療法が開発されていないため、世界中で多くの患者がこの時期における学業や職業の問題から、その後の一生涯にわたる社会的ハンディキャップとなることが指摘されている。睡眠相後退症候群の病態メカニズムに関しては、概日リズム同調機構の機能低下とともに睡眠恒常性調節機構の機能不全が考えられている。高照度光療法など概日リズム同調機構に働きかける治療戦略はいくつかあるが、睡眠恒常性調節機構に対する治療的働きかけについてはほとんど研究されていない。本研究課題では、概日リズム機構に対する正常化とともに、最新の睡眠相後退型に関する病態研究で指摘されてきた睡眠恒常性調節機構の機能不全を睡眠時間を適正化することで改善する新たな治療プロトコールを開発し、その効果を検証することを目的とする。睡眠相後退型概日リズム睡眠障害患者で、外来における睡眠衛生指導、高照度光療法、メラトニン受容体作動薬療法を用いて6週間にわたって効果の見られなかった対象者に、それまでの治療法に加えて睡眠時間を短縮する効果のある薬物を投与し、その効果について6ヶ月間の観察を行った。治療効果が不十分な患者に対しては、入院を実施して全断眠を行うことを計画していたが、今年度は現時点までにおいては全例入院に至らず寛解が得られている。
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