研究課題/領域番号 |
26510001
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山崎 友子 岩手大学, 教育学部, 教授 (00322959)
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研究分担者 |
菅沼 雲龍 桜美林大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50329421)
HALL James 岩手大学, 教育学部, 准教授 (80361038)
西館 数芽 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90250638)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レジリアンス / 災害 / 災害文化 / 岩手 / 津波 / 国連防災世界会議 / 持続可能な社会構築 |
研究実績の概要 |
災害が地域をより強くする契機になりうる視点から「レジリアンス」をキーワードに災害研究を進めた。岩手県三陸沿岸の町「田老」では、保育園・中学校への連携授業とNPOへの聴き取り調査をもとにフィールド研究を実施。岩手大学共通教育科目「津波の実際から防災を考える」を活用して「私の碑を作ろう」という授業を展開。全校生が「私の碑」を作成し、岩手大学学生が英語訳。この教育活動は、被災地の中学生が津波に対する地域の精神風土を受け継ぎ、さらに自分達の考えとして発展させている災害文化の「継承」「醸成」や、内陸部の学生の積極的関与から、東日本大震災後に災害文化が「伝播」される可能性の証左となった。また、岩手県教育委員会と連携し内陸部である盛岡市の県立高校生と岩手大学学生が、東日本大震災の記録誌『つなぐ』の英語ダイジェスト版作成に取り組んだ。この教育活動から、若い世代同士の学びあい、被災地から学ぶということの意義が浮かび上がった。これらの教育活動に、災害をトータルに捉える視点についての研究成果をあわせ、2015年3月開催(於仙台市)の国連防災世界会議にポスター発表。 自然現象は一時の衝撃であるが、「災害」をトータルに捉えるとその自然現象に人間がどのように対応してより対応力のある=レジリアントな社会を作っているか、あるいは作ることができるかが見えてくる。東日本大震災以降、被災地岩手においてどのような試みがなされてきたかを歴史とともに考察し、『被災地・岩手のレジリアントな社会構築の試み 3.11後の持続可能な社会をつくる実践学』として明石書店から出版した。研究代表者・連携研究者に本田敏秋遠野市長を編者とし、山崎憲治が冒頭「3.11以降のレジリエントな地域社会づくり」を論じ、山崎友子が第III部「教育と復興」を担当し、災害をめぐる新たな概念である「レジりアンス」を実践例をもとに示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害研究において新たな視点となる「レジリアンス」について、岩手での実践をもとに書籍としてまとめ、日本全国に発信することができた点、大きな成果であった。東日本大震災で大きな被害を受け、また過去にも津波被害を受けている地岩手での研究成果を世界の他の地域での災害とそれへの対応と比較考察し、災害論をより大きく展開していくことが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
災害とレジリアンスについて国際的な研究を進めることを目指している。具体的には、海外での学会発表、海外での調査(アメリカ・アフリカ・タイ)、海外での実践交流授業(タイ)を2年度に実施する。海外の災害とそれへの対応の比較検討により地域性・歴史性・災害の種類との関連を考察するとともに、タイの中等学校における国際的な実践交流により、研究成果を社会に還元しつつ災害教育を深化させることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査研究に関して:タイでの調査研究は打ち合わせを別予算において2015年1月に実施することができ、2016年1月に本研究における調査および災害学習のための実験授業を行うこととした。 アフリカ研究において、文献調査により1月~2月に災害文化の一つと考えられる「祭り」が実施されることが判明、また、現地との連絡により安全性の確保の観点から、信頼できる案内人を確保した上でこの時期に調査を実施することが必要と判断した。その結果、2016年1月~2月に実施を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
〇タイの洪水の歴史調査とバンコク市内の中等学校での災害学習実験授業実施:2016年 1月上旬2週間(研究者3名、生徒2名参加) 〇アフリカにおける災害文化調査研究:2016年1月~2月。サヘル地方・カメルーン(研究者1名参加)
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