2017年度の主な実績としては、日本における原子力関連施設が集中する青森県の六ヶ所村にて、村役場、原子力関連施設にて現地調査をおこなった。役場の方々の協力により、六ヶ所村の産業構造、地理的・社会階層的特徴およびエネルギー関連事業と村民生活のかかわり、福島の原発事故による住民の生活への直接的・間接的影響、施策の変化等について聞き取り調査をおこない、震災前の福島双葉地方における住民生活との共通性と差異を分析した。その結果、共通性としては地域の経済的依存性の高さ、エネルギー事業従事者の(地域内における)階層的地位の高さが挙げられ、また、当地では福島と異なり発電設備がないことから、福島の原発事故について地域内では当事者意識が共有されておらず、事故後も新たな避難計画等は特に策定されていない点が明らかになった。また、これらの調査分析と並行し、日本の原子力政策の歴史をについて先行研究のレビューを重点的におこなった。 本年度は研究最終年度であり、研究期間全体を通じて、2011年の原発事故へと至る原子力政策の歴史をめぐる文献レビュー、福島の被災者の社会環境と意識の変容に関する計量分析、また計量分析を補完する形で原子力関連施設密集地域への事故後の調査をおこない、社会階層の観点から福島原子力災害による地域社会の分断と統合について考察を重ねた。
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