本研究は、東日本大震災後の被災地における住民間の分断・利害対立と社会階層とのかかわりについて、社会調査データの分析を通じて実証的に明らかにした。 特に2011年の原発事故によって放射能汚染にさらされた福島市を中心に、2015年時点における住民の地域復興意欲や放射能汚染リスク認識に対する階層的規定要因を分析し、事故直後のデータとの比較を通じ住民意識の変容を明らかにした。分析から得られた主な知見は以下となる。1)被爆による健康不安には階層差がみられず、事故直後と異なり階層を超えて偏在化していること、さらに2)原子力発電所の廃止については社会的地位が高いほど否定的であることである。
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