研究課題/領域番号 |
26510006
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 紀代美 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (70345643)
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研究分担者 |
青木 賢人 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (30345649)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 減災 / 自然災害 / 防災 / 地理学 / 学習支援 |
研究実績の概要 |
本年度は、①地域や学校で防災学習実践を重ね、DIG教材試行版を作成すること,②加賀地域の保育園と保育園を利用する保護者に対する想定森本富樫断層帯地震への理解や備えの現状を問うアンケートの実施を活動内容として計画していた。 ①は、金沢市教育委員会(教員研修での学習・DIG実施)、石川県教育委員会(実践的学校防災実践事業での各校での学習・研修での支援・実施)、白山手取川ジオパーク(市対象の防災をテーマにした学習講座でのDIG・フィールドワーク)などと連携して学習実践をした。低頻度・高強度災害地域では、まず自分の生活環境に災害リスクがどのように・どの程度・どの範囲で存在するかを可視化して災害の可能性に気付いてもらうステップが必要で、そのうえで防災に目を向けることにどう意義・必要性があるか、発災時には地域や社会、家庭がどう困り事に見舞われうるか、自分事として具体的に捉えてもらう支援が重要となる。そのため、各研修等では、災害・地域環境への気づきを促すことに留意した学習展開を心掛け、具体的イメージを持つDIG内容とした。実施を踏まえ、試行版学習教材を作成した。 ②は、災発時に自律的に対応ができない保育園園児を取り巻く大人たちの備え・意識にみられる課題を洗い出すため、保育園と利用する保護者を対象としてアンケート調査を実施した。どちらも40%近い回収率で協力が得られた。どちらも自保育園が立地する地域の想定震度を過小評価あるいはイメージを持っていない者が大半を占めた。園児引き渡し・引き留めに関するマニュアルの未整備や被災条件を的確に踏まえないままのマニュアル整備、保護者の職場からの駆け付け経路上の被災状況や移動時間への意識の希薄さなど課題が明らかになった。アンケート結果はパンフ等にまとめ、各園に結果発信した。また、報道機関からも本課題の取り上げがあり、TV・ラジオで県民に発信できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初計画していた活動内容をほぼ実施できた。①については、各方面の協力の基、多数の実践を展開でき、これらから知見を得つつ、試行版の学習教材の作成ができた。②に関しては、予想以上の協力が得られ、保育園に関わる防災対策の課題や保育園と保護者への関心喚起の必要性が明らかになった。作成したパンフレット類も活用しながら、広く情報発信をしていきたい。調査結果に関しては、30年度に学会報告することになっており、その後論文を作成して公表に努める。なお、過年度からの継続課題である学校防災でのマニュアル整備や避難訓練等での課題の整理に関しては、論文作成中である。また、昨年度学会報告した地理Aでの地形学習での課題は論文公表し、防災学習での課題も指摘した(これに関しては、研究課題に関わる考察だが科研費からの支出はない)。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の①に関連して、30年度は試行版教材を用いながら、引き続き地域や学校での防災学習実践を重ね、低頻度高強度災害地域でも多くの人々に災害に向き合ってもらえるような学習環境・材の提供を目指して情報等を収集することとする。30年度も、県・市教委、白山手取川ジオパーク、国交省との連携が予定されている。それら活動を踏まえて30年度内に学習教材(完成版)の作成をする。試行版では地震に絞った作成となったが、水害など多様な災害への関心喚起やDIGポイントの提示などにも工夫を凝らしたい。 ②に関しては、30年5月の学会発表ののち、調査結果の論文作成・情報発信に努める。また、作成中となっている論文の当方等を急ぐ。 これまでの活動成果を踏まえながら、低頻度・高強度災害地域でも多くの地域住民が防災に目を向け、防災「から」地域や生活を見直す動機づけができるよう、学習環境・材の整備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度からの研究活動を進めるなかで、課題追及のために先に保育園とその利用保護者へのアンケート調査を実施すべきと判断し、協力が得られる状況でもあったので、当初計画で計上していた旅費およびその他費目の一部をアンケート実施費用(集計謝金とアンケート印刷費)に充てた。当初計上のその他(試行版作成)を冊数を減じてアンケート印刷や郵送費に充てた。旅費は私費で対応した。予算内で最大限対応できる部分を支払った結果、若干端数が生じ、残金が出た。次年度の予算に組み込み、完成版印刷に使用したい。
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備考 |
過年度に続けて、防災士研修会、先述の学校・ジオパーク関連の研修・防災訓練、町会等での防災訓練・講演、市民講座・大学公開講座などでの講演などで、科研成果の社会への発信や地域での実践支援に活用した。作成したパンフレット(保育園アンケート結果分)とポスターフリップ(保護者アンケート分)は、アンケート協力各園に郵送した。テレビ・ラジオ・新聞(NHK・MRO・テレビ金沢・北國新聞など)への取材対応をした。
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