東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の中小企業の経済実態を調査するため、中小企業の実態に詳しい税理士に対しアンケート調査を行った。アンケート調査は、東北税理士会所属の税理士に対し、郵送による発送・回収の方法で行った。また、2014年度から2016年度まで連続して3回行った。このうち、2014年度は、東北税理士会所属の税理士のうち、岩手県、宮城県、福島県に事務所を有する税理士に対しアンケート調査を行った。2015年度及び2016年度については、東北税理士会(東北6県)に所属する全ての税理士を対象にアンケート調査を行った。 アンケート調査の結果、経済状況等の概況としては、復旧・復興に向かっているが十分なものではないこと、被災直後とは異なる状況であり異なる支援が必要であること、等が明らかになった。 そして、被災3県(岩手県、宮城県、福島県)の倒産業種に関しては、卸売小売業やサービス業の割合が高く、また、建設業の倒産率が増加している年度もあった。その他3県(青森県、秋田県、山形県)では、建設業の倒産はいずれの年度においても割合が高かった。このように、被災地だけでなく、被災地の周辺においても建設関係等に影響が生じており、この影響は継続している。 さらに、復興特需に関して、各年度において建設業や宿泊業とする回答が多くあるが、宿泊業に関して、福島県で割合が増加する年度があった。原子力発電所に関する問題は、津波等による被害と異なり、継続的な被害が生じているが、経済状況に関しては若干の変化も生じている(ただし、テキストマイニングの結果では、風評被害に関するコメントは各年度で確認され、この問題は残されている)。
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