研究課題/領域番号 |
26510013
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
馬場 美智子 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (40360383)
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研究分担者 |
森永 速男 兵庫県立大学, 総合教育機構, 教授 (40210182)
浦川 豪 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (70379056)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 住宅再建 / みなし仮設住宅 |
研究実績の概要 |
住宅再建プロセスにおいて、仮設住宅は恒久住宅へと移行する上で決断を迫られる大事なステップである。プレハブ型の仮設住宅と異なり、民間賃貸住宅を借り上げて仮設住宅とみなす「みなし仮設住宅」は、一時的な住宅を供給する上で大きな役割を果たしている。今後の大規模災害における住宅再建施策を検討する上でみなし住宅の活用は重要であり、大量のプレハブ仮設住宅の建設に頼らず、既存の民間ストックの活用という点でも、住宅再建過程の見直しを含めた議論が求められている。 みなし仮設住宅は集合型ではなく、空いている民間賃貸住宅に入居するため、被災者がばらばらに居住するため、住宅を再建していく上で集合型の仮設住宅とは異なる問題が出てくる事が懸念される。そこで、まずはみなし仮設住宅の居住者の実態を把握するとともに、住宅再建における意向と判断に影響を与える要因を明らかにしておく必要がある。 被災者の住宅再建の意向調査は自治体を中心に行われているが、それだけでは不十分である。被災者の視点に立って住宅再建を見直す事が重要であり、そのためには被災者が住宅再建において何を重視しているかをまず知る事が必要である。 本研究では、みなし仮設住宅居住者の住宅再建における意向と要因分析を行うこととした。分析を行うため、アンケート調査を実施し情報を収集した。その際、福祉サービスの提供を行うNPOの協力を得ながら被災者への負担を配慮して調査を行った。 本研究が取り上げる東日本大震災における住宅再建に関わる住民以意向調査は主に自治体で行われている事から、調査研究としては少ない。また、みなし仮設住宅居住者に焦点をあてて住宅再建意向を調査した研究はない。本研究では、自治体が行う意向調査のように単にどの選択肢を選ぶかではなく、その選択に関わる要因に着目して調査分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮設住宅居住者を対象に、恒久住宅への移行における意識や意向について調査・分析を行った。 まず、災害後の住宅再建プロセスに関わる情報の収集を目的として、阪神淡路大震災や新潟県中越地震等の過去の災害及び東日本大震災の復興関わる文献(論文、報告書等)調査や被災者、行政職員、その他の復興関係者らへのヒアリング調査を行った。これらを整理し、住宅再建に関連すると考えられる要因を抽出した。 次に、東日本大震災を対象に、被災から恒久住宅までの、被災者の居住経緯と実態について、仮設住宅居住者、行政職員、現地NPO職員等を対象とした小規模なヒアリング調査を行った。住宅再建の一連のプロセスを把握するために、被災者の属性、被災状況(元の居住地の地理的・社会的特性)、取り巻く状況(条件)や居住環境(形態・場所)、それに対する被災者の評価に関する情報を収集し考察した。 続いて、住宅形態及び居住地選択行動について検討した。住宅形態と居住地選択に影響を及ぼす要因を抽出するため仮設住宅居住者に対してアンケート調査を実施した。アンケート調査のデータを分析し、重視される要因や属性・環境による相違等について考察した。
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今後の研究の推進方策 |
1.住宅形態及び居住地選択に関する分析 アンケート調査により収集したデータを用いて、想定した選択要因の中で特に住宅形態と居住地の選択に影響を及ぼす要因を分析する。具体には、個々の被災者固有の要因と被災者をとりまく居住環境要因、及び供与される選択肢が、住宅形態と居住地の選択に及ぼす影響について明らかにする。また、仮定した被災者の住宅形態・居住地選択行動モデルに基づいて、恒久住宅選択における意思決定の構造を分析する。分析手法は、統計解析手法を用いる。 2.復興施策としての恒久住宅供給・再建計画への活用方法の提案 過去の住宅再建の問題と取り組むべき課題を明らかにし、それらをふまえて分析結果の恒久住宅供給・再建計画への活用方法を検討する。復興計画における住宅再建施策(住宅形態、居住地、事業規模等)への分析結果の活用方法について検討し提案する。また、事前復興において、災害後の住宅再建を先取りして行う減災対策(復興住宅や防災集合移転促進事業等の土地の確保等)への分析結果の活用方法についても検討・提案する。さらに、分析結果を地理的に把握し、災害リスクも考慮しながら、住宅供給・再建を空間計画化するための方法を検討し提案する。最後に、分析結果やこれらの検討を踏まえ、新たな住宅再建プロセスの構築に向けた課題を提示する。これらの検討においては、行政職員やコンサルタント等から意見を聴取し、提案をとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品が予定額より少し安かったため、実支出額がわずかに下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
金額は少額であるが、翌年度以降、「その他の経費」が予定より多く必要と予想される事から、「その他の経費」として使用する予定である。
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