研究課題/領域番号 |
26510014
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
青田 良介 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (30598107)
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研究分担者 |
山崎 栄一 関西大学, 社会安全学部, 教授 (00352360)
馬場 美智子 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (40360383)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 被災者支援 / 住宅再建 / 復興基金 / 義援金 / 熊本地震 / 宅地被害 |
研究実績の概要 |
平成28年4月に熊本地震が起こったことに伴い、同地震後の住宅再建等に対する復興基金・義援金のあり方も考察の対象に含めた。熊本地震でも、平成28年12月に「熊本地震復興基金」が設置された。熊本地震の特色の一つに地盤の崩壊があり、住宅の上物が問題なくても、宅地が崩いたために再建せざるを得ないといった被害が多数発生した。被災者生活再建支援法による支援の対象外に対する行政の対応が注目された。 これに対し、熊本県では、①既存の公共事業で解決できるものはそれを活用する、②公共事業の対象とならないものについては復興基金で新たな支援策を講じる、という方策を採った。これにより、公共工事から漏れた法面・擁壁・地盤の復旧工事、地盤改良工事、傾斜修復工事については、費用から50万円を控除した額に対して2/3を乗じた額(上限633.3万円)を支給した。このほかにも復興基金で、二重ローンに伴う利子相当額を補給する支援を行うことになった。一方、東日本大震災復興基金で実施された住宅再建そのものに対する助成や利子補給は現時点では実施されていない。 復興基金の補完機能を認識するとともに、その時々の復興基金によって支援メニューや支援額が異なるといった課題が見える。復興基金を制度化する、あるいはガイドラインを設置することにより、支援の継続性を担保する必要性が明らかになった。 また、義援金については、県レベルで住宅全壊に対し80万円の見舞金が出るが、これも集まった額と被災者の数等で配分額が算定されるため、災害の度に被災者が受け取る金額が異なるなど、不安定なままである。 住宅再建支援のためには、安定した支援策が必要である。将来の巨大災害に向けた復興基金の制度化、義援金配分のミニマム・スタンダードの設定の必要性が認識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熊本地震における住宅再建支援にも調査を拡げることで、被災者再建支援に新たなニーズが生じたこと、それに対して、復興基金で機動的に対応していることが明らかになった。一方、基金の設立に時間を要すること、東日本大震災復興基金での支援が実施されていないことなど、アドホックに設置される復興基金の限界や課題が改めて認識された。東日本大震災復興基金との比較や、熊本地震復興基金の今後の展望に関する知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
海外の住宅再建支援の知見を得るため米国等の調査を予定している。また、国内においても兵庫県の住宅共済再建共済制度のようなユニークな支援の仕組みについても調査する。国だけでない、自治体や、市民・企業等民間が有する資源活用も含め考察することにより、巨大災害に備え安定した住宅再建支援等ができるよう、復興基金や義援金の活用を含めた新たな住宅再建システムモデルを提示したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
入国ビザ取得の関係で米国調査ができなかったことから、29年度に実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
海外調査を行い海外事例の知見や他の国内の知見も得たうえで、これまでの研究成果と合わせて、巨大災害に備え安定した住宅再建支援等ができるよう、復興基金や義援金の活用を含めた新たな住宅再建システムモデルを提示したい。
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