研究課題
対象流域は福島県飯舘村比曽川流域の上流部で、2011年3月の福島第一原発事故により汚染された、流域面積445haの農地流域である。調査対象流域からの河川を通じた溶存態及び懸濁態放射性Csの長期的な流出実態を把握するため、河川水位、流速等の自動観測及び河川水の自動及び定期サンプリングを継続し、昨年度は溶存態放射性Cs濃度が低下傾向が認めた。これには、2015年春から開始された除染の影響が示唆される。河川水等に含まれる懸濁物質について、放射性Cs捕捉ポテンシャルを測定すると共に、固液分配係数との関係を検討し、これらは全体的には正の相関関係にあることを示した。既往知見に基づき、放射性Csの固液分配係数が電気伝導度と共に低下する傾向があることを認めた。除染が河川流出に与える影響がSWATモデルによる予測に強く影響することを認めた。2013年から2016年までの河川モニタリングのデータを用いて、除染前の2013年のデータによりSWATモデルのパラメーターを校正し、2014年から2016年の予測を試みた。昨年までの研究で、2014年はよく予測できることがわかっている。しかし、2015年と2016年は、河川流量においても良い結果は得られなかった。河川流量の予測ができなければ、物質の流出予測はできない。そこで、この不一致は除染による影響と考え、土地利用を、事故前の2011年以前の農地が2015年に除染により裸地とし、フレコンバッグの仮仮置き場は市街地とするとともに、農地の土壌表層1層目の土壌データを除染で導入された客土のものに置き換えた。2015年のデータでパラメーターを校正し、2016年を予測したところ、良く再現できた。今後、土砂、K、放射性Cs流出への除染の影響についてモデルの適用を検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Agricultural Water Management
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10.1016/j.agwat.2016.08.001
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