研究課題/領域番号 |
26511003
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 雅典 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40355079)
|
研究分担者 |
菅野 均志 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30250731)
高橋 正 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80132009)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 放射性セシウム / 福島第一原発事故 / 土壌 / 森林 |
研究実績の概要 |
福島第一原発事故による放射性Cs で汚染された森林および草地において、放射性Cs の大部分が有機物層(森林リッター層および牧草地ルートマット層)に分布している。本研究では、有機物層に保持されている放射性Cs の有機物の分解に伴う挙動を解明し、汚染リスクの評価につなげることを目的とする。 本年度は、「間伐強度の異なるスギ林における放射性Csの分布」を重点的に実施した。これまでに、東北大学フィールドセンターのスギ人工林の間伐強度の異なる試験地(無間伐区、弱度間伐区、強度間伐区)において、リッター層・有機物層を採取し、放射性Csの分布を調査している(2011年6月)。今回、前回の調査と同じ方法でリッター・土壌を採取し、3年間における放射性Csの変化を調べた。 その結果、面積あたりの放射性Cs量は、2011年は無間伐区が間伐区に比べ低い傾向にあったが、2014年には全体に放射性Cs量がほぼ倍となり、間伐強度による差は認められなかった。これは、2011年当時、スギ樹冠に保持されていた放射性Csの大部分が、2014年までに溶脱し林床に降下したため、間伐の影響が小さくなったためと考えられる。また、3年間でリター層の面積あたり放射性Cs量は減少し、土壌上層(0~15cm)では増加傾向が認められた。しかし、土壌下層(15~30cm)では明確な増加は認められなかった。当初リター層に降下した放射性Csは土壌層へと移行したが、その大部分は上層に留まり、下層への移行は小さかったと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、間伐強度の違い(植生の違い)が放射性セシウムの樹木から土壌への移行に影響を及ぼすが、3年経つとその影響が小さくなることを初めて明らかにすることができた。しかし、スギ林土壌のサンプリング、試料調整に予想以上の労力がかかったために、当初予定していた「有機物層(リッター層、ルートマット層)中の放射性Csの形態別測定」「ルートマットの分解に伴う放射性Csの形態変化」、については実施できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
有機物層(リッター層、ルートマット層)中の放射性Cs の実体を明らかにするために、土壌に適用されている逐次抽出法を有機物試料へ応用し、放射性Cs の形態別定量を行う。供試材料としては、草地のルートマット、森林のリッター、汚染稲わらを用いる。これらの有機物が土壌中で分解する過程における放射性Csの形態変化を追跡するために、土壌(黒ボク土壌、沖積土壌)に有機物を添加し、畑状態で培養実験を行い、逐次抽出法による放射性Cs、クロロホルム燻蒸法によるバイオマス放射性Csを分析する。さらに、汚染有機物添加土壌における植物栽培をポット試験で行い、放射性Csの移行係数と形態別Csの関係について調べる。これらのことによって研究を加速し、所期の目的を達成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者による物品費を予定していたが、他予算で対応していただいたために、若干の次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
26年度成績を補完するために、分担研究者による分析を行うので、それに使用する。
|