研究課題
本研究は、稲わらによる有機物補給機能を重視した、新たな地力増進手法を開発することを目的とした。2011年の原発事故により、原発より40km北西に位置する農業の盛んであった福島県飯舘村の農地では、削り取り除染や客土が行われた。そのため、以前に蓄積された肥沃な土壌や土壌有機物含量が低減する恐れがあった。初年度の本課題結果から、現場有機資源の投入による水稲生産性の向上が確認された。2015年は9月の関東・東北豪雨で氾濫した河川水により、栽培水稲がすべて倒伏した。有機資源投与の影響以上に、氾濫水によるダメージの大きな区画での収量低下傾向が確認された。線量は、氾濫水による圃場内への放射性物質流入が観測されたが、玄米の線量は国の流通基準値である100Bq/kgを大幅に下回った。2016年度は氾濫土砂による放射性物質の流入を考慮し、土砂流入影響の度合いの異なる3区画に対し、稲わら、または牛ふん堆肥を投入する区、未投入区を設けた。それぞれの区画での生育に明確な差は見られず、玄米中線量の増加は認められなかった。本研究における継続的な観測結果より、飯舘村の除染後水田において、国の流通基準を大幅に下回るコメを栽培できることが確認された。また、削り取り除染直後の水田においては、有機物施用が生産量回復に有効であることが示唆された。昨年度の課題として、人々の安心・安全のための農業従事者の被ばくレベル、現場作業中の被ばく線量レベルの引下げ等を目指し、空間線量の把握、曝露量調査を行う予定であった。この件に関しては、本課題に協力いただいているNPOが主体となって、個人の日々の曝露量調査が開始された。よって、本研究では農地、特に土壌と水稲の放射線レベルの調査に重きを置いた。本年度は帰村の年であり、今後の検討課題は多い。今後も長期にわたり、土壌および作物中の放射性物質濃度をモニタリングしていく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
土壌の物理性
巻: 135 ページ: 33-39
Sustainability
巻: 8 ページ: 1332
10.3390/su8121332